・・・攻城戦の後、俺は仲間達と別れ研究棟の中を彷徨っていた。

身体中に激痛が走る。

血管が破裂し、肉片が零れ落ちる。

クローンは短命だ。

成長速度が異常に早い変わりに、数年で身体にガタが来る。

施設で生まれて約四年。そして度重なる実験、メルンテーゼでの死線の数々。

身体へ掛かる負荷にクローンの細胞が耐え切れず、ついに崩壊を始めたのだ。




俺はここで終わるのか・・・？


嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

まだ俺は何もしていない！何も残せていない！

生まれた意味も、存在の価値も、何も見出せないまま死ぬのは嫌だ！！


死にたくない。


死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない



ｸﾞﾁｬﾘｯ



右腕が崩れ落ちた。

「あﾞ・・・・うぁあﾞぁぁああああﾞあああぁぁぁああ！！！」

声にならない男の叫びが研究棟に響き渡る。


もはや痛みすら感じない、あるのは死への恐怖のみ。


「嫌だ・・・死にたくない・・・死にたくない・・・！」


仲間とはぐれて、当てもなく長い廊下を彷徨い歩く。

俺という存在が、腐り、零れ、崩れ落ちていく。

血が、肉が、皮が、次々と死滅していく。


これが寿命。

生命の活動限界、旅の終着点。








その時、暗い廊下の中から小さな光が目に過ぎった。

研究者が逃げ出した後の研究室。

手術台の上には、白い布で覆われた人型の何かが横たわっている。



何処の世界でも、考えることは同じなのだろう。

人間を研究するために、人間の身体を用いる。



彼、いや彼女かもしれないそれは、

きっとかつての俺と同じように、

研究者達によって、人体実験をされているのだろう。


（あぁ、こいつも俺と同じなんだな・・・）

人の形すら失いかけているそれを前に、

同情や哀れみにも似た感情が突如として湧き出した。

ｸﾞﾁｭﾘｯという鈍い音を立て、自分自身の胸から心臓を抉り出す。

朽ち果てていく肉体とは裏腹に、心臓は命の鼓動を刻むように大きく脈打っている。

そして･･･

被検体「E-07」は別世界で寿命を死を迎え、

フェイク・ザ・ヒーローは本物の"英雄"になった。

―――ドクンッ

心臓を引裂くような鋭い痛みが走った。

ゴホッゴホッとむせる返るような咳の中には、鮮血が滴っていた。