【一揆参加21日目】

森の中の建物は噂通り研究施設であった。
あの後、内部の情報を探っていた他の参加者に確認したところ、エンブリオを複製、生み出すような研究を行っているようである。

同行しているエンブリオの2人には悪いが、この話の情報が全てだとしたら少々拍子抜けである。
倫理的な是非はおいておいて、このような研究はどこの国家でも行われているものであるし、そうでない国家があるとしたらそれは為政者の怠慢である。
生命への冒涜の先が軍事利用であろうが民生に向けたものであろうが、そういった研究によって救われる者が確実にいるのである。
救われるのは一人や二人ではない。数百数千、いや万でも数えきれないほどの「ヒト」が恩恵を受ける。

そう、恩恵をうけるのは「ヒト」だ。

大体において生物というのは身内と定義するもの以外には冷酷になれる。
自らの属する集団のため、村のため、国のため、友のため。種族や性別といった括りで考える者もいるだろう。
そういうものだ。そうでなければ日々の食事さえままならない。


そしてそれは我々に限った話ではない。人に限った話ではないのだ。


この世界の王にとって、身内とは何を指しているのだろう。


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