気付いていたことでした。

この角も、
目も、
牙、
鋭い爪、
突き刺すほどに硬い獣毛も、
歪な形の脚も、
尾も。
シャントリエリ、という名前さえ。

全部初めから、私の持っていたものでした。

殺してしまいたいという衝動も、全部。

己の歪さも、貪欲さも、凶暴さも、有害さも、何もかもを私は、他の何かのせいにしていました。
そうしたところで残されるのは、もっとタチの悪い何かでしかないというのに。

この事実が胸を締め付ける悲しみは、紛れもなくその行いの代償。

……私は、気付いていたことでした。

身体と心を大きく欠損したことは、紛れもなく事実です。
未だ尚、思い出せていないことはたくさんあります。
何もかもを偽っていたわけではありません。
気が付いていたことに、確信があったわけではありません。

私は私に嘘をついていました。
雲があらゆるものの形をとるのと同じように、
忘却の靄をいいように利用して。

その嘘は、決して私一人では暴くことは出来ませんでした。
私に投げかけられた多くの言葉、慈しみ、肯定、問いかけ。

それらがあったから、私は。

私は、

私はまた、振り返らなくてはいけない。
過去に置き忘れたものは、まだ、まだたくさんあるのです。

私はもう一度、ルヴナンの用意をします。殴られたかのような鈍痛が、頭にまだ響いているけれど。
幸いにもこの身体は、あまりに頑丈に出来ているのですから。

何故私は嘘をついたの？
何故私はここにいるの？
私の名前は？

そして、

やさしい笑顔の女性であったが、刀を構えると目の色が変わる