―――何時かの過去―――



廊下を頭を下げながら歩いていると城内に悲鳴が響く。
この城じゃあよくある事だ。誰も驚きもしない。

そう呟きながら、辿りついた扉を開ける。
この城はそれなりにでかく作っちゃああるが、いかんせん俺には小さい。
俺がデカすぎるだけとはわかっちゃいるが。

会議の間は好きだ。俺が頭下げなくてもぶつからねえ。
そんな俺の好きな会議の間で……このババアは人間を甚振ってやがる。

そう言うとババアは持っていた刀で腰掛けていた人間の腕に傷をつける。
……相変わらず、よくわかんねぇ趣味だ

それだけ言って自分の位置に座る。普通は椅子なんだが、俺はデカいから床だ。
別に気にしちゃいねえが。

―――何時もと変わらぬ魔族の日常―――

それは、遠い遠い昔の話。
勇者が居て、魔王が居て、人が居て、魔族が居た。
勇者は沢山の人の中から生まれ
魔王はそれに対抗すべく、魔族を作り出した。

その後、魔王は倒され、呪いによって勇者は魔王となった。
しかし勇者は意識までも魔王となる前に、勇者の力と魔王の力を合わせ、
世界を改変した。
全てのそれまでの記憶は封印され、魔族は全て人族となった。

そうして、今の世界が出来る―――


――――――――――――――――


……目が覚める。視点が低い気がする。何か感覚が違う気もする。
夢も見てた気がする。何故だか、懐かしい、ような――

聞き覚えのない声が響く。

そして気付く。その声が、自分から出ていると。

朝起きたら、人になってた。

自分の頬を叩いてみたりする。無駄に痛ェ。

なんかざわざわし始めた

強そうなやつ、と聞かれて少し頭を悩ませた。
何せ大勢いるものだから、特定の誰かを上げることができないのだ。

答えを得た。
けれどそれは、きっと始まりでしかなくて。

答えをくれぬものに、挑むために。
答えなんてないものに、抗うために。

やたらあたりをキョロキョロしている。