拳銃の弾丸を改める慣れた作業はけれど、近いのだろう戦いを期待して少し饒舌な滑らかさを伴った。周囲の石造りから流れてくる夜の冷気を受けてなお指先はわずかに熱い。経験がかじかむことのないよう体のそれを求める部位に血を送り込んでいる。戦闘は頭脳や記憶よりまず身体が対処を始める。……

二階の廊下を進む人の気配は少ない。とはいえ明からさまに迂回されていると云うほどでもなく、日ごとに少しずつは多くなる。気配の増えない遠因に私たちのあることは想像に難くない。革命のための短距離を「それでもなお」踏み越えようとする人間の少なさをそれは意味しているのか、それとも、正面からを王への短距離と見なす者があまりに少ないのか。攻め手はいまだ各地に散らばってひとつになる気配を見せない。それは各地の個別化した戦力が自らの熟し切る時を決めあぐねているからだ。

弾丸は限られ、エンブリオは未熟で、しかし戦いはそこにある。熟れ切らない戦いは不利益で、しかし人々を苦しめるネクターの増税を速やかな解決に導こうとはする。予断の動かない未来へ身を投げる不慮のなかで、個々の戦力としての不利益が、しかし世界を自由へ少しだけ推し進める。

革命は血と痛みを伴う。「それでもなお」の一言がその血と痛みを乗り越えさせる。ここには血と痛みがいまだ足りない。