4日目

記：＊＊＊＊＊＊

　暖かな日差しが降り注ぐ、穏やかな陽気。時間は非常にゆっくりと進むような、そんな気がして、おそらく、今この時が平和であると勘違いしてしまうような者もいるくらいであろう。ケル・サーベラスもそのような者の一人だった。

　そんな彼女の前に、この場には似つかわしくない黒い影が一つ。

　鎧のような体毛に覆われたそれは、痩せぎすで、口端から長い舌をだらしなく垂らし、その眼光は目の前の獲物をまっすぐと捉えている。ケルを見据え低く唸り声を上げているそれは、まさしく殺し屋ｔ…………

　……え、犬なのこれ？ ……コホン

　そう、叫ぶやいなや、ケルは目の前の犬を抱きしめにかかる。数分の間、行き違ったせめぎあいが行われ、これ以上は無駄だと悟ったのか、犬は抵抗するのをやめた。少女の無邪気さが勝利を収めたのだった。

　そうして、鼻歌交じりに旅路を急ぐ少女の足は次第に草深い森へと向いていたのだった。

追記、エンブリオとかいうあちらの世界の者の姿を計器が正しく捉える事ができていないようだ。少し込み入っているために、しばらく時間がかかるということらしいので、気長に待つことにしよう。

§§§

記：ケル・サーベラス

　念願のわんこが仲間になった！

　この世界にきて本当に良かったと思う。だってエンブリオって、どの子も可愛いし、餌だって全然大変じゃないんだもの。まぁ、私の魔力を食べているらしいけど……

　戦って、契約が終わると、やっぱりこの子も少し姿が変わるみたい。前のままでも十分に可愛かったのだけれども。今の姿でも問題はないかな……

　さて、そういったわけで仲間も増えてどんどん先を進んでいっているのだけど、すこし、周りの様子が変わってきているみたい。方角ってこっちであってるよね？