今日からは数日間、畝傍さんとは別行動をとることとなりました。
　待ち合わせの約束を取り付けているとはいえ、少々寂しいものです。
　得難い方ですからね。未練がましい自覚はありますけど、やはり惜しいです。

　……それに伴いまして、青葉ちゃんからいくつか本を貸し付けられました。
　異世界の本で、とあるエルフの女王の物語を5冊ほど。
　序盤の展開については……育ての母としては、娘がそういうものを読むような年頃になったと言わざるを得ませんでした。
　とはいえ後半……いえ、最終巻に限って言えば中々考えさせられるものでした。
　王女の身でありながら、隠れて鍛練を重ねた弓師。
　城から逃げ出しスリルに酔う、開錠に長けた盗賊。
　唆され、禁断の杖の封印を解いた魔法使い。
　幻惑魔法を察知し、偽りの王の正体を看破した女王。
　そして謀殺された夫の敵を討った母親。
　……幾つもの身分で、立場で生きた幾つもの彼女。
　仇敵である偽りの王も、気丈に立ち向かった彼女も、求めていたのは同じ平穏で。

　……ささやかな幸せを、大事にしたいものですね。

　著者は書かれていませんけど、この作品はその世界の実話を元にした作品で、長寿なエルフである彼女はまだ存命だとか。
　いずれその世界にも行けるでしょうか。
　世界が許すのであれば、お邪魔してみたいものです。