PMの日記の続き的な、感じ

眠れないのか、と少女が聞いた。
眠れない、と少年が答えた。

なら私が寝かしてやろう、と少女が笑った。
少年が聞き返す前に、少女が少年を抱き締めて。

これで寝れるだろう、と少女が聞いた。
これで寝れるよ、と少し間を置いて少年が答えた。


少女の寝息が聞こえてから、少年は眠りについた。
初めて少年が眠りについた時の記憶。



柔らかい匂いが思考を痺れさせる。
そのまま、手を引かれるように意識が閉じていく。
ただそれは、暗い闇の中に溺れるような感覚ではなくて…
温かい日の光のなかで、包まれるような。
そんな、眠り。

微睡みの中から、意識が浮上する。
まず最初に思ったのは、頭を覆う圧迫感と息苦しさと…甘い、匂い。
夢と現実の境を消していく甘い匂いに、そのまま身を委ねそうになるが…活を入れて、無理やり瞼をこじ開ける。
そして視界に飛び込んできたのは…白い服に、小さなボタン。
これは、一体…
そのまま軽く絞められている頭を上に向けると細い首筋。
そして更に視線を上げれば。


何時も見ている自分の主の寝顔が視界を覆って。


ぁ、とでかかった声を腹筋に力を入れて無理やり押さえつけて、出そうとした声を長く息を吐いてかき消す。
もし一番最初にこの顔を観ていたら絶対叫んだでしょうね…と想いながら、状況を確認。
横を見れば腕が私の側頭部を回って抱きしめているようですね。

つまりは…私はお嬢様に頭を抱かれていながら寝ていたようです。

思わずため息を一つ吐きながら、さてどうしたものでしょうかと考える。
このまま寝てしまうのは…流石にないですね。というより眠気が飛びました。
となれば…起きましょうか。
身体の全体に力を入れて怪我の具合を確かめてみて……大丈夫ですね、これなら。お嬢様のお陰です。
手を後頭部に差し入れて、そっと力を入れて隙間を開けて脱出。
一瞬お嬢様が声を漏らしますが、そのまま布団を抱き締めて睡魔に身を委ねてくれたようです。

ベッドから降りて立ち上がり、私が起きる気配に目を覚ましていたのでしょう。
先程から身体を起こしていたシュユに口だけでおはようと伝えて…


朝食を用意するために音を立てずにドアを開けて、部屋を出て行く青年。
その顔がずっと赤く染まりっぱなしだったことを知っているのは、ベッドで穏やかに眠る姫以外。

[>土人形のような機械が三拍子のリズムを刻んでいる。