■ Day 21 ： 遂に戻る

　――話は19日目に遡る。アサちゃんが赤毛のおじさまと戦ったあとも、ギンゴちゃんは姿を見せなかった。

　戦いを終えたアサちゃんを見る。アサちゃんはけろりとした感じで、何事もなかったかのように水を飲んでいた。

　わたしはその言葉を聞いていくらかホッとした。まだ迷惑をかけないように無理して笑顔を作ってる可能性はあるけど、それでもいつも通りの明るいアサちゃんがいることだけで嬉しい。そう考えて、小川に向かう準備をしようとしたとき、ふと近くの茂みが揺れたのが目に入った。

　わたしの頭と同じくらいの高さから、青い肌の顔が出ていた。

　知ってる子だったので、思わず叫ぶ。あの子は、アサちゃんのお母さんと契約してるウンディーネのフフミちゃん。背も私とあまり変わらないし、わたしがアサちゃんと契約してから間もない頃にやって来ただから、同期みたいな感じで仲良くやっていた子だった。だからこの子も『フミちゃん』ってあだ名で呼んでる。
　オロオロと慌てるフミちゃんに気付いたのか、アサちゃんが近くに寄ってきた。

　心無い言葉をかけられて、フミちゃんは泣きそうになっていた。


　フミちゃんが落ち着いたところでわたしが話題を切り出そうとしたら、

　今度はアサちゃんがオロオロしながらフミちゃんの着ている紺色の服を指さす。

　そういえばアサちゃんが小さいころ、似たような大きさの人形で遊んでいたような……フミちゃん曰く、昔着ていたの（確か薄い布を何枚も巻きつけただけだった気がする）がサヤコさんによって捨てられたらしく、仕方ないので人形用の水着を付けるはめになったらしい。

　このフミちゃんの証言が正しければ、ギンゴちゃんはわたし達の前から姿を消している間、アサちゃんの家に勝手に乗り込んだことになる。

　アサちゃんはフミちゃんの言ったことを、ぽかんとした顔で聞いていた。

　そうアサちゃんは反論したけど、声はかなり震えていた。

　恐る恐る訊ねると、アサちゃんは首を横に振った。

　フミちゃんが出てきたのと同じ茂みがガサガサと揺れ、姿をくらましていたあの子が現れる。

本当にわかっていないらしい。

うーんと考え込んだ後にどくにんじんは首を振った。首というか胴を。

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