自分の境遇を悲観したことはない。自問する機会は山ほどあったが、どうあっても最初の答えに戻るだけだ。
善かれ悪しかれ、この世に存在するからには何かをしなければならず、形を持つからにはできることも限られる。
その上自分は、この身に与えられた役割というものをこれ以上なく自覚しているのだ。
　
　

　自分の境遇に希望などない。肯定する意味もなければ否定する意味もない。
魚が泳ぐことも、馬が走ることも、“そう”であるだけであって誰かの意思を挟む余地はない。
少なくとも自分は何故そうであるかを知っている。それで十分だと思っていた。
　
　
　

彼らは自らの結末を知らない。私は自らの末路を知っている。
彼女らは私の本性を知らない。私は私の正体を知っている。
　
　
　



　彼らの、彼女らの足掻く様は私にとって何がしかの意味を持っていたのだろうか。
　
　そこまで考えを巡らせたところでため息をついた。

　どうあっても、最初の考えに戻るだけでしかなかった。


「……こういうことやっておけばさ、なんとなしに己の不覚を誤魔化せる気はするよな。
無駄に伏線散らばせて結局思わせぶりなオチで終了とか。邪道極まりないからアイツは嫌いそうだが……貴女はどう思うよ？」
「はぁ、その、えっと？」
「なんでもねぇや、忘れてくれ」