今日も今日とて、リナ達は険しい山道を登り続けている。
賞金首を避けようとする結果ではあるが…それでも、何もない険しい山道も攻城の選択肢に含んでいる一揆の司令部の思惑は、リナにはいまいち掴みきれないでいた。

（何で、こんな横道もいいとこの山道も、ルリアンナ達は進ませてるのかしら？王城への入口は、それなりに平らな場所にあるのに）

　リナ達は、かつて森の中で王城への侵入経路を提示された事がある。
その男の風貌が胡散臭かった事と、王城へ突入するには準備が十分と判断してその際の突入は見送ったのだが…その際に示された廊下とこの山道には、随分と距離がある。

（…まあ、ここも城門の中といえば中だし、調べる意味はゼロではないんでしょうけど）

　愚昧な支配者というものは、別に珍しいものではない。世襲制であれば、尚更である。
王と民は生まれつき平等ではないと決めつけ、民を顧みずに搾取し続け…結果としてこの世界の一揆のようなことを起こされた王の存在は、リナの出身世界の歴史ですら、枚挙にいとまがない。

（…でも、私の元いた世界では、事態がここまでになったら、王が死刑台に上らされるか、良くて失脚して亡命するかだった）
（何で、パラダイスとかいう奴は事ここに来ても姿勢を改めないのかしら？）

現状、王の勢力以外はほとんどが一揆に加担しているとみなしても構わない状況だ。
それほどまでに、エンブリオの存在はこの世界の人々にとって重要なのだ。

（もちろん、自分達以外が全部敵に回っても良いくらい自分達の力に自信があるってことなんでしょうけど…力に自信があるからって、ここまでするかどうかはまた別の話だわ）

　単なる愚昧ゆえに民を抑圧する支配者ならば、まだ分かりやすいし、抵抗も楽だ。
しかし…単なる愚昧だけで、ここまで規模が広がった一揆との対立を継続出来るとも思えない。単に愚昧なだけの王を周囲の重臣が私欲目的で煽っているだけならば、そろそろ一揆の規模を見て保身に回ってもおかしくない頃合いである。
リナには、何か強い意思が介在してるとしか思えなかった。

（…その辺の判断材料まで求めてるとしたら、ルリアンナ達も大したものだけど）

　これまでの所業により苦しんだ民衆の報復措置として、死刑台に上らせて終わりにするのならば、王の意思など知った事ではない。
…だが、同じ災禍を繰り返さないためには、検証は欠かせないだろう。王の意思も、その有力な材料の一つには違いなかった。
後の検証まで視野に据えて攻城をさせているのであれば、ルリアンナは、印象以上に参謀として優秀なのかもしれない。

（………ていうか、城門の内側広すぎ！何でこんな並々と山が連なれるわけ！？）

山道を登る疲労により、リナの思考はここで打ち切られた。

眩しいものを見るように