三度山岳を抜けて、これまでと同様に平原に戻るのかと思えば、男が取った進路は枯れた土地とも称される砂礫飛び交う地。

　かつては何もない不毛な地という先入観もあってマイナスイメージも強かったが、数日歩き続けて多少なりと経験を積んだ現在は銀髪の少女の双眸には以前とは違う視方が垣間見えるようになってきていた。

　頷くかのように炎の揺らめきを示したのは、精霊サラマンダーである所のルイであった。彼女の場合、砂地後の調査…地下牢への道へと至る通路で見つけたので、厳密に言うと不確かさな所はあったが、それでも見つける切欠となったという意味で少女は同列に名前を呼んだのだろう。
　それが分かったのか、或いは分かってないのかも知れないが、自分の名前が出たことにルイは反応を示したようだった。

　とりつく島もない状態だった最初の頃を思い出し、改めてルイの方を見やれば何処吹く風とばかりに先を行くサンダーバードのエポワスを追うように、ふわふわと飛んでいってしまう。

　遅れまいと自身も後を追えば、男の傍に今度は二人見慣れぬ人影が見て取れた。

　一人目は後背で髪を三つ編と、手に持つ鎌が特徴的な少女。
　二人目は肩も露な格好が特徴的な槍と背中に羽を携えた少年。

　どちらも似たような年齢と思しき少年少女ではあったし、二人ともが連れるエンブリオもまた、此方に負けず個性の強そうな顔ぶれであった。

　共通点というには些か強引ではあったが、それでも似たような世代と話を持てる機会はそうはないかと様子を探っいるうちに、間もなく戦闘に突入したのはめぐり合わせの妙だったのかも知れないし、単純に油断があったのかも知れない。

　荒涼たる砂地に埋没する一欠けらの煌きを見つけることはあっても、その多くは深々と冷え込む砂塵の地というのを一時とはいえ忘れていたのは銀髪の少女に思い改めさせるには十分な邂逅であった。

　三人の前に現れ出たのは炎を纏う犬とも猫とも取れそうな生き物が三つと、駝鳥が一つの計四つの敵影だった。
　炎を駆使する相手だけに苦戦も予想されたが、戦いの火蓋が切って落とされれば予想は意に反して早々に終わったのだった。
　それもそのはず同行者たる二人の力が凄まじかったという一言に尽きるほど、その同行者の火力たるは想像の遥か上を超えていたのだった。

　あまりの衝撃に声をかけるという目的も何処へやら、目にした光景を忘れないようにと自身が持つ紙片に何事やら記録をつける少女の姿がそこにはあった。。。

「―――。」