前衛の役割は大きく分けて二つ。
味方を守る盾、もしくは最前線で敵を薙ぎ払う役だ。
理想を言えばその両立。しかし自分にそれは不可能だと、アムルイも理解している。
故に求めるは力。
味方を守る盾で在ろうとする者さえ、打ち砕く暴威。
倒される前に倒すことをこそ望む。

出し惜しみをしている余裕はない。
否、そのような傲慢が許される身であったことなど、一度もない。
対戦者を見るアムルイの瞳に浮かぶのは、羨望の色だ。
自分では望んでも得られない、攻撃に耐えるための強さ。
前衛に立つ身として、それを嫉妬しない筈がなかった。

だが嫉妬しながら、その未練は捨てた。
不器用なこの身では、一度に多くを追い求めることは叶わない。
ならば愚直に追い求めた唯一を、ここに出し切ろう。

亡霊騎士の力が剣に宿る。
生ある者を憎み、魂すら蝕む闇の力。
どんな祝福も、今は呪いと成り果てよう――！

繋がった、とアムルイは思う。
自分は耐えられない前衛だ。
それが今、こうして立っていられるのは、仲間のお陰だ。
戦友は不甲斐ない自分を信じ、ここまで連れて来てくれた。
だから応えよう。
敗北はもう、何度も味わって来た。
そろそろ皆で、勝利の味に酔いに行こう――――。

力よ唸れ。
刃よ躍れ。
そう在れと、望まれるままに。

契約を結んだ騎士の力が剣に宿る。
それは神に背き、悪徳を揮う不浄の力。
ならばこそ、命持つ者には猛毒となる。