長大な剣をくるりと翻し、アムルイは駆ける。
その剣を支えるように、主人と共に走る影が一つ。

重力を振り切り、少女は加速する。
剣を大地の束縛より解き放つは、小さな妖精の魔術。

歯噛みしつつ、アムルイは速度主体の構えから切り替える。
速さで翻弄できないのなら、打つ手は一つ。

守りをこじ開けることができたかどうか。
それを試すならば、今一度速度を。

――アムルイは術理を持たない。
森羅万象を師と仰ぎ、山野に生きて来た彼女には、理論的な技など望むべくもない。
それでも彼女は戦い続けて来た。
その果てにいつか届くと信じて、疑い、迷い、問いかけながら、走り続けて来た。
故にこれは、彼女が遂に得た一つの答え。
己の一撃を届かせるために、術理を超えた速度をこそ望む。

強く地を蹴って走る。
自分自身さえ置き去りにして、前へ。
これが問い続けて来たことの答えだと、叩きつけるために。
今、全霊の愚直さを以って、術理を穿つ――！