物心ついたときには既にごみ溜めのような場所に居た。

　父親の姿はなく、居たのは屑みたいな母親だけ。
　父親のことを聴くと決まって母親は機嫌が悪くなり、俺に暴力を振るった。

　母親は自ら働くことはせず、毎日のように男を連れ込んでいた。
　その中でも一際酷い外道がいた。

　暴力を振るうことにしか能がない男。
　自分で働きもしないくせに酒は飲むし人が稼いできた金を強奪する。
　そのくせ、毎日のように俺に暴力を振るってきた。

　幼い俺は笑っていれば暴行を加えられないのではと考え、それを実行してみた。

　だが笑ったら殴られた。
　泣いても殴られた。

　だから表情を出さないように努めたがやはり殴られた。

　そうして、いつだったかは思い出せないが、ただ『このままでいたら死ぬ』と、本能的に悟った。

　だから殺した。
　母親も、その男も。

　特に罪悪感などはなく、ただあったのは初めて感じる、高揚感。
　思えばこの時からだったのかもしれない。俺が人を斬ったり刺したりすることに快感を覚え始めたのは。

　そしてその直後、近くを通りかかったマスターに拾われた。




　この頃のことを思い出すと何故かはわからないが、父親の存在が頭をよぎる。









　会ったことすらない男に今更何かしてもらおうという気は全くないが、ただ一つだけ聴きたいのは













　何故、こんな名前を付けたのかということだけだ。

〜〜1時間後〜〜

臆病風に吹かれているのは俺の方かね、と、少しだけ自嘲じみた。

気にしていないようだなと、そう問われたなら一度頷いて。