『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.07.20.10:20、とある書庫にて――


　ぽちは違う映像を映し出す。それは、写真のようだった。
「これはマスターの所属していた部隊『エクスカリバー』の写真だよ」
　数人の男女の集合写真だった。ディバイダーらしき人物を中心に
数名の男女が映っている。その中に見慣れた人物、マスターの姿もあった。
やや緊張したような面持ちで映っている。
「こいつは……昔のディバイダーか？」
「そう、これが昔のディバイダー。で、この端っこにいるのがボク達のマスター」
　と、羽根の先端でマスターを指した。
「マスターのちょっと若い頃の写真だね。人間的に言うなら可愛い頃ってやつ？
可愛いよね。若い頃のマスターって！」
　本気でそう言ってるのか、冗談なのか、ぽちは頬を赤く染めた。
「今とは違う所属だな。俺の記録にもない部隊名だ」
「そりゃ、今はその部隊がないからね。ディバイダー自身が潰しちゃったから」
「潰した？」
「英雄とまで讃えられたディバイダーが、何故か惑星『アース』を憎むようになり、
アースの人類そのものに牙を剥いた。彼は自らの手でエクスカリバーを壊滅させたんだ。
奇跡的に生き残ったのはマスターだけだったそうだよ」
　ぽちは再び周囲を見回し、声を一段低くした。
「この一件は後に軍の関係者の間で『レッドステージ』って呼ばれているよ。
表沙汰にはされてない一件だ。君が幾ら新聞やニュースを漁っても無理。
事実は隠蔽されているからね。ディバイダー及びエクスカリバーの面々は
名誉の戦死ってことにされてるよ」
「マスターも戦死扱いなのか？」
「君はちょっとお馬鹿だね。エクスカリバーに所属していた全員が
有名ってわけじゃない。ディバイダーが所属していたからこそ、部隊名が
有名になったんだ。有名なのは部隊名であって、個人ではないよ。
部隊の面々全員が有名だったら、今頃軍はアイドル組織だよ」
「あぁ、成る程。部隊を戦死扱いされたってことか」
「英雄が敵になったなんて表沙汰には出来ない。だから、軍は事実を隠蔽したんだ」
「何故？　ありのままに伝えればいいだろう」
「お馬鹿！　敵を増やし、人類を不安と恐怖のどん底に突き落とすつもりかい？
今現在でさえ、『パンドラ』って脅威があるというのに！　お馬鹿っ！」
　ぽちの翼がぽんぽんと頭を叩いた。大したダメージではなかった。
成る程、ぽちの言うことも尤もだ。