星屑の小川、守りの森、山岳、大草原。そしてまだ出向いたことのない、砂地……

　王の城はその広さもあるが、環境も様々であることが分かっている。

　いや、様々過ぎると言えた。

　水源があり、森林がありながらも砂漠を抱えることができ、さらには一望では足りないほどの広大な草原まであつらえてある。

　拠点である竹林の屋敷周辺は、闇が己の魔術で構築したと言っていたが、おそらくこれらにもそういった魔術なり超常の某かを用いて作り上げたのだろうか、と確証もなく予想する。

　だが何のために？

　単純な農耕目的であれば、砂漠を用意する必要はない。
　それに森林は果樹の収穫目的とも考えられたが、収穫のための道を手を加えて作ったようにも見えなかった。それに広庭にならば、そういった造園施設があってもおかしくはない。


　何のために、このような環境を用意したのか。
　その疑問は尽きない。
　そうして考えた末、一つの思考に行き着いた。
　
　ここは巨大な実験場ではないのか、という荒唐無稽とも思える発想に行き着いた。

　各エリアはそれぞれ環境を再現することで、局地でのデータを得るためのビオトープ施設ではないかと。

　ビオトープ。生物生息空間という単語を用いたのは勿論、エンブリオの存在があったからだ。

　それぞれの環境にエンブリオを放ち、そこで何かしらのデータを取っているのではないか？　だとすれば無駄に厳しいだけの環境を構築した理由にもなるのではないかと考えた。

　だがそうなると、なんの実験をしているのか、という新たな疑問が湧く。

　現状、それ以上の式へとつなげるピースを知らない。

　ただ、なんとなく。それは大量に回収されたネクターではないかとそう思っていた。


　本当に。いまだ新王の真の狙いは分からない。
　だが分からなくとも、前進しなえれば。そして前進するためには立ち塞がる敵を払いのけなければならない。


　今度の行き先は山岳だったか。初めて会う二人組との共同戦線となる。

　同行してくれた二人に迷惑はかけられない。
　確実に突破することを考えつつ、ゼゼはエンブリオを伴い、竹林の屋敷を後にした。

ゼゼの回答を終えると一つ間を置いて静かに応える。

んー。と唇に指を当てて考える仕草をする
どうやら上手い説明の方法を考えているようだった。

くすり　くすり
首を擡げながら社交辞令的に謙遜の言葉。
トリックスターめいた、奥底の読めない笑顔に、励ますような笑顔は変わる。
あなたが微笑んでくれた事への返し。

体は丈夫だ。人並み以上の再生力を持つし、トカゲの御人よりもしぶとい生き物。何せ花ですから。
ただ一瞬不味い、という表情を浮かべた。あまりつらつら語り過ぎるのは良くなかった。無駄に心配をかけさせてしまった。自分なんかを思ってくれてしまっていた。
脳内で自分を叱りつけつつ『できること』と云われると……。

ほんの少し言葉を詰まらせてから

思案するようなゼゼの表情を一瞥し、仮面の下でにやと笑う。

しみじみと彼は続ける。
同時にゼゼの財布事情に同情するが、顔には出さない。
――むしろ、間違いなくおもしろがっている。

ぼそりと二人に聞こえるか聞こえないか程度、囁くように彼は呟きながら、ふと思いつきを口にする。

鯛焼きとか差し出したら、やはり怒るのかどうか、少しだけ気になった死人であった。

問われた少女は喜色を満面に表し貴方に答える

そう言うと少女は背中に背負っていた２刀のショーテルに手をかけ貴方を見やる
静かだが威圧感を感じる目でじっと見ていた

そう言って、紙に簡単な店の場所と自分の名前と店主への言伝を書いて、ゼゼへ渡す。