頭についてるの黄色いさんかくの耳は本物だし、おしりにあるもふもふした尻尾も本物。でも、アタシが狐なのかって聞かれるとわからないのよね。だって生まれた頃の記憶なんて覚えてないんだもの。誰だって赤子の頃の記憶なんてちょっとしか覚えてないでしょ？そういう感じで覚えてないの、忘れてもあんまり気にしてないし。
　でも、アタシが気にしてなくても周りは気にしていたから、自分自身もちょっと気になるわね。狐の子なのか、初めからこういう種族だったのか。
　

　アタシの世界の話なんだけど、人でも獣でもないどっちつかずな容姿だと、あまりいい扱いを受けないのよね。人間とペットの中間って言うか、雑って言うか…平たく言うと、ぞんざいに扱われるの。中には物好きな奴もいて親切にしてくれるけど、そういうのは結局少数で、世間の風当たりは弱くなる事は無いし。
　そんな訳で、どっちつかずな見た目の方達は人間の社会では暮らさずに、森や山で暮らす生き物達の社会で暮らしていくことになるの。アタシは狐の里でお世話になったけど、大抵は天狗や河童とか力を持った連中にお世話になるそうよ。噂でしか聞いた事がないけど。

　他の生き物達の社会は知らないけど、狐って化けるのが得意なのよね。騙すのが上手いし、賢いし、尻尾はもふもふしてるし。そういう狐達のところで暫く暮らしてたのだけど、彼らって見た目と年齢が全然合わないのよね。いやいや、勿論アタシから見た言い方なのは分かってるけど、外見がアタシとほとんど同じで歳がずっと上だったりすると…ちょっとびっくりするって言うか…その、遠慮しちゃうのよね。狐にとっては子供でも、アタシにとってはすごい年上で…ほら、年上はいたわれとかそんな言葉もあるし…。


　アタシの膝の上にちょうど、八尾の狐の子供が元気そうにはしゃいで座ってるけれど――
　
　


　う〜ん…ずっと年上っていうのは分かるんだけど…どうしよう？
　

私はコヒメさんの言葉に甘えてそのふかふかな尻尾に触らせて貰う事にした。