相性の悪さ、と言いましょうか。
　それとも嗜好の問題と言いましょうか。
　これまでに会ったことのないタイプとはいえ、全力で相手を嫌いになるというのは中々貴重な経験でした。

　畝傍さんのお世話になる前は、先輩に連れられてあちこち探検に行き、様々な心霊現象に遭遇したものです。
　今思えば女三人で随分と無茶をしたものですけど、成仏せずに現世に留まる霊は大抵何らかの想いを抱えていたものです。
　共感出来れば供養しましたし、そうでなくても説得して成仏して頂いたこともありました。
　ただ、それでも。
　目の前にある生命を玩具と言い切り、襲いかかって来る相手には情けをかける気はありませんでした。
　……冷徹さも怒りも、私の中に残っているのですね。
　それでこそ人らしい、とマリーさんは言ってくれましたけど……私は羊で在りたいです。

　そんな悪霊……ナイトスピリットですが、何故か畝傍さんとマリーさんがエンブリオとして契約してました。
　畝傍さんはともかく、マリーさんはいつぞやの狼に続いて二度目です。
　性格はともかく能力は上々と言われましても、私としては全面的に賛成はできません。
　感情と利害を切り離して考える、というのは理屈では解らなくもないんですが……魔法使いというのも甘くはありませんね。
　私は実用主義にはなれそうにありません。