それは、力を取り上げられた

それは、心を取り上げられた

それは、心を取り戻した

それは、力を取り戻した


求め合う　引き合う　心と力







私の右眼。

「私」の右眼が。

ない。



ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないいないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない

がば、とベッドから飛び起きる。あたりを見回せば、借りた部屋の一角。

少しはだけた寝間着の胸元は、嫌な汗でじっとりと濡れ、朝日をちらちらと反射していた。



嫌な夢を見た。

二度と思い出したくない。

二度と逃れられない。

そんな気分にさせる夢。クソッタレめ、最悪の寝覚めだ。

まだ眠りに片足を突っ込んだままの頭を、振り動かして強引に目覚めさせる。



ごん

柱に、頭の右側をぶつけた。

突っ込みを入れつつも、柔らかな笑みを浮かべる。
一揆の戦いというのは常に危険に隣合わせだ。
少年は、少女が傷つくことを好まない。
だからこそ、無事の再会は少年にとって喜ばしいものであった。
しかし、少女の言葉に少年の様子は一変し――

右の瞳に刻まれた紋章が、僅かに揺れる。
少年の眼が、少女の姿を解析する。
人のかたちにあって、人と異なるもの。
右眼と同じ、『視通す』もの。それと、もう一つの、何か。
あまり長く視ていてはいけないと、そう思った。

その眼、あるいは、そのかたちそのものが。
『そういうもの』であるのだと、漠然とそう感じながら。