見知らぬ街の風景が見える。スカルはこの風景を見たことなど一度もない。恐らくは、ブラド＝リリスの一部となった女性の見た景色の一つだろう

「本当に行くのか？」

　街の入り口で、一人の男が話しかける

「うん、行くよ。新王の暴虐ぶり、もうこれ以上は我慢できないから」

　話している内容から察するに、一揆の本拠地へと向かってそれに参加しようとしているようである。

「復讐のため、か。親友だったものな。あいつは。それがネクターを持っているところを見つけられてその場で裁判もなく銃殺されたんだ、気持ちは判るが」

　どうやらこの女性は親しい人を新王勢力のものに殺されたようである。その復讐として一揆に参加する。至極当然の行いだ。
　しかし、彼女の表情は、明るかった。復讐の焔に身を任せて休むこともせずにスカルの開発を主導したアルキース博士とは一線を画す程に。そして、彼女は言った

「それだけじゃないよ。確かに、復讐や憎しみのためじゃないといえば嘘になる。けど私は、それ以上にこんな悲劇を金輪際生み出したくないの。リーゼのように殺される人は勿論、それによって悲しむ人が生まれることも。だから私は行く。復讐よりもそんな気持ちで戦うことを、きっとリーゼも望んでるから。それじゃ、行ってくるね！」



　場面が変わり、処刑場。そこにはギロチンにかけられそうになっている女性の姿が在った。彼女は一揆に参加しようとして旅しているところを見つかり、捕まってしまったのだ。武装していたし、なんとか兵士の一人二人は倒したが、逆にそれが新王に異を唱えるものだという何よりの証拠となってしまったのだ。

（ごめん、リーゼ……私、何もできなかった……。ちゃんと鍛えてたし、いけると思ってたんだけどな……
　……悔しい、悔しいよ。なんで私達はこんなことをされなくちゃいけないんだろ。……せめて、せめて私のような人がまた現れてくれるように祈ろう。復讐と、それ以上にこの辛さを広めることをよしとしない人がまた現れてくれるように……そしてその人が、私のような結末を迎えず、辛い冬を越えて春の実りに届くように……きっとそれが、私に出来る最後の抵抗だから……
　さよなら、みんな……リーゼ、今、そっちに行くよ……）


――ゴトンッ
　重たい鉄の刃が無慈悲に落ちる音が、周辺に響き渡った

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