『行き当たりばったりな冒険　〜ダークの場合〜』



　とある世界の過去、とある戦艦にて――


　壁に掛けられた額縁の中で映像が流れている。時々、後付けの音楽に音声が混じる。
かつてミニアークが、彼の視点から記録した映像と音声だ。
　異世界で出会った人々との交流の記録だ。
　世話になった医者の青年が映り、少しだけ懐かしさを感じていた。それと共に
ある意味で兄弟とも呼べる白い髪の青年のことを思いだし、頭を振った。
　異世界の度は好奇心を満たすのに十分だったが、その分だけ代償を
払うことにもなった。

「……プロトタイプのアークも、かつてのアークも失われた。異世界へ渡る手段は
君の旦那さんの機体を除いて無くなったわけだ」

『うん。機能は封印しちゃったけどね。現状では旦那様の機体以外ないわ。
お父様の記録も全部完全抹消しちゃったしね』

「博士の記録も？　それは勿体ない」

『私達、ミラージュ人が宇宙へ進出して、気の遠くなるような年月が過ぎ去ったわ。
それでも、未知の文明との接触は必ずしも良い結果とは限らなかった。
幾度となく争いを繰り返してきただけじゃない。これ以上手を広げてどうするつもりよ。
下手に干渉して今度は次元を超えた戦争なんて嫌よ。戦争の種になるようなものなんて
要らないじゃない』

「……必ずしも戦争と限らないが……君がそう言うなら、私も君に従うが……
しかし、私個人としては勿体ないな。旦那の話だと超高度な機械文明の世界らしきものを
見つけたと言うし」

『興味深い話であるけども、未練があるなら自力で作ってね。私は手を貸さないよ』

「いや。未練はないよ。君が要らないなら、私にとっても要らないものだ」

『むぅ。「君にとっても」って、それじゃあ貴方の意見はどうなのよ。
貴方は貴方、私は私。人格は別々なんだから、貴方の意見を主張しなきゃ！
私に遠慮しなくていいって何度も言ってるでしょ！』

「……あぁ、言い方が悪かったね。御免。私の意見で言ったつもりだった。
私も君と同じさ。要らないよ。異世界への興味はあるが、その分の代償が大きすぎた」

『……本当にそう思ってるの？』

「本当に思うよ」

『本当ならいいけど、自分に嘘は吐かないでね』

「判ってるよ。だから、私は君に対して嘘を吐かない。君の旦那さん以上に
私は君を好いている。友人だからって、君を完全に譲る気はないな」

『えぇっ！？　ダーク、好いてるって！？　私を！？』

「……冗談だよ。面白いな｡本当の君は」