(ﾓｸﾞﾓｸﾞ)

　(ｼﾞｰ)

　(ｼﾞｰ)

「…何だよ。食いたいのか？」

「いや、お主が美味そうに齧り付くものだから眺めていただけじゃよ。
…我々の活力源は"生命エネルギー"故、お主らが摂るような食事は意味を為さんからの。
お主の血肉が作り出す生命エネルギーこそが我々の食事、と言っても過言ではないじゃろうし
依然逼迫しているこの状況下で、その元とも言い換えられる食糧を強請るなどせんよ」

「まず消化とかできないからねー僕ら。
まぁ意味無いって言っても味が分かんないワケじゃないから
そういうのが好きなやつなら嗜好を満たす事はできるし
種や個体によっては生命エネルギーに転換できるのもいるみたいだけど」

「ふーん…」

「…コレ何？」

「どう見ても林檎です、本当にありがとうございました」

「…喰えんのかコイツ…」

「アップルさんの頭部は甘味と酸味が絶妙な加減で
霜降りのように入った蜜がたまらん逸品じゃぞ。
生で齧るもよし、調理してもよしとまさに良質の食材であろう」

「…もうやだこの世界」

「…バジリスクか！」

「ほう、知っておるのか」

「俺の"世界"にもいるからな。
ブレスに石化効果がある厄介な相手なんだが、こっちではどうなんだ？」

「石化とまではいかぬが、対象の動きを著しく制限させる能力を持っておる。
それと恐ろしくタフで、自己治癒能力も高い。全力で当たらねば危ういぞ」

「…ギリギリだな…この辺うろつくのはそろそろ切り上げた方がよさそうだ」

「…よし、進むぞ」

「これは…使えそうだな」

「…！」


人影に気付き、物陰に身を潜め様子を伺う。

「…こんな事に付き合っているヒマは無ぇんだがな」