「んー……ヒムロ、でどうだろうか。人と繋がりのある氷から連想したんだけど。仮の名としては十分じゃない？」
「良いだろう。契約によりて、これより我はヒムロと名乗る」

「えーと……そうだな。きみと契約した日に桃の枝を拾ってたんだよね。マミ、でどうかな。桃の語源のひとつ。
　で、女の子の名前としても違和感は無いと思うんだけど」
「あら、私は桃の精霊ではありませんよ？」
「うん。だから正体を隠す分にはそっちに繋げたほうがいいかなって」
「惑わすのは本意ではないのですが……あなたがそういうなら名前をもらいますわね」


　やれやれ、なんとか間に合いはしたかな。ちょっと無理矢理な気もしなくはないけど、本人が了承はしてくれたし。
　……しかしなんか、思ってたより大人しくしてくれてるなあ。
　これだけ放っておいたらもうとっくにかじられててもおかしくない覚えがあるんだけど。
　ネクターがそれだけ口に合ったってことなのかな？　空腹で暴れないでくれるのは助かるんだけどね。
　以前はもうひどい目に遭ったもんなあ……食い散らしすぎて魔物扱いされたこともあったっけ。山狩りはもう勘弁だよ、ほんと。

　……それにしても、ずいぶん間が開いたような気がするな？
　なにか時間の感覚がおかしくなってるような……寝相でも悪かったかなあ。平らな床で寝るのも久しぶりだったし。

背負った薙刀を引き出し、構える。

背負った薙刀を引き出し、構える