仲間、と言う程親しくは無く、最も合う言葉は商売敵。
そんな連中と顔を突き合わせる機会が有れば大抵は近頃ネクターの搾取を始めた新しい王の事だ。
店を構えて商売する奴らにも影響が有る、が俺みたいな行商となるとその影響はより強くなる。
ただでさえあまり無い儲けが安定しない市場のお陰で赤字が嵩んで行く。
ネクターの不足はエンブリオとの契約、及びエンブリオの成長が滞る事だが、
それによってエンブリオに頼りがちな、または一部のエンブリオにおいては必須である産業が滞る事につながる。
そしてこの世界じゃそういった物は少なくは無い。
産業の停滞は技術の停滞でもあり、職人自身もエンブリオの恩恵が受けられなくなれば質が落ちる。
それでも未だ経済面において何らかの支援策などが施行されればどうにかなるかもしれないが、
少なくともそういった類の報せは一切耳に届く事が無い。
いよいよ危機感が募り、会合が催された。


会合の結果、俺を含む数人で王城へと赴き、現状の改善を要求することになった。
俺が選ばれたのは王城に何度か足を運んだ事がある事、それなりに知名度があった事、まぁそんな所か。
護衛をつけるかどうかで議論になったが、やはりそれは逆効果だということで
ある程度戦える面子で揃えたという事も一因だった。


俺たちは王城へと着き、思ったよりもすんなりと中に通された。
門をくぐり、広い庭を通り、真っ直ぐと伸びる廊下をそこそこ偉そうな兵士について通る。
広間に出るとそこには今まで見たことの無い奇妙な奴が居た。
いや、奇妙と言うのは風貌ではなく、雰囲気というか、何かそういった類の物だ。
残念ながらその奇妙な感覚はこの身に刻まれているがそいつの姿は朧気にしか覚えていない。
そいつは武器を構え俺たちに襲いかかってきた。

俺を含め、一級の戦士やらに比べたら大分劣るだろうがそれなりに腕に自身はあった連中だがあれよあれよという間に倒れていった。
気づけば立っているのは俺だけだ、もう既に左腕を大きく抉られ痛みで意識が朦朧としていた。
今まで流した事の無い血を流し、身体も思うように動かない。
どうにか必死にそいつの攻撃を捌こうとしたが対応出来ない左側から襲い来る攻撃に左足を刎ね飛ばされ、
トドメとばかりに大きく振りかぶった後俺の脳天めがけてそいつの腕が振り下ろされた。


体中が痛い。
ひどくぼやけた視界の端に見たことも無いのたくった黄土色のワタみてぇのがある。
その下にはねっとりとした黄色い液体と、赤い、恐らく血が交じり合って広がっている。
指の一本も動かず、目蓋を閉じる事も出来ず、息を吸うこともかなわなかった。
ぼやけた視界が白く染まっていく、目に白いモヤがひっついたみたいに何も見えなくなっていく。
白しか見えなくなった頃、声が聞こえた。

「アナタの望み　叶えてあげる」

その声の直後白から一転、視界は黒く染まり。
俺の意識は一時途切れた。

同行者2人を交互に見て。

目を細め、まじまじと見詰める。
姿をはっきりと確認したその時、とある鳴き声（？）が耳に届く。


『ほっかほかだよー！！』

服や鎧に付いた土埃を払い落とす。

その後、わしゃわしゃと髪を掻き回した。

ドライアドに巻き付いていた蔦や枝をいくつか採取する。