セバスチャンとのおべんきょうもおわり、もえつきてはいになったみたいにぐったりとしていた猫でしたが、そのあとにだされたおかしですぐにもとどおり。
いまば、ほおいっぱいにおかしをほおばってとってもしあわせそうです。


そんな猫をよこめに、ししょーはこっそりとためいきをつきました。


「いい気なもんだぜったくよォ・・・・・。」


と、セバスチャンがすこしはなれたところからこっそりとししょーをてまねきしています。
めんどくさそうにしつつも、ししょーはセバスチャンのもとへとはばたきました。


「ンだよ？もうあのガキに愛想つかしてやってらんねェってか？」


「違います。あなたと一緒にしないでいただきたいですね。
・・・・・少し、確認しておこうと思いまして。」


てきとうにあしらっておこうとかんがえていたししょーでしたが、セバスチャンのめはしんけんそのもの。
しかたなく、ししょーもまじめにこたえることにしました。


「で？何を確認すんだって？」


「坊ちゃんの様子についてです。」


「アイツの？こっちがムカつくくれェ能天気にヘラヘラ笑ってんじゃねェか。いつも通りだろ？なんか問題あんのか？」


「いえ――今ではなく、私と出会う以前のことです。」


あァ、とししょーはあいづちをうちます。
たしかにセバスチャンとであったときはいつもとようすがちがっていました。


「まァ、おめぇと会った時は具合も悪いみてェだったしな。」


「そのようですね。それで、それ以前に坊ちゃんは何か無理をなさっておりませんでしたか？」


「無理だァ？」


くびをかしげてそのあたりにおきたできごとをおもいだすししょー。
たしか――


「あー・・・・・無理っちゃあ無理なのかねアレはよ？」


「その様子ですと何かあったみたいですね。」


「んーあれは無理っつーか・・・・・少し前にアイツと山岳で特訓みてェなことをしたんだわ。勿論一人じゃ危なっかしいから飛び入りで他の奴等と組んでな。」


「なるほど、そうでしたか。」


それっきりなにかをかんがえこむようにだまりこむセバスチャン。
なんだかきになってししょーがたずねてみようとしたそのとき、セバスチャンがぽつりとつぶやきました。


「・・・・・坊ちゃんは生来体が弱いはず。過度な運動は――」


「・・・・・やっぱおめぇ、アイツと知り合いなのか？」


ししょーのこえにはっとなるセバスチャン。
すこしきまずいのか、めをふせて、


「いえ・・・・・分かりません。」


「何だよそれ？」


さすがにししょーもあきれがおです。
セバスチャンはふう、とためいきをはくと、


「分からないんですよ、本当に。ただ、もし坊ちゃんが私の知っている彼だとすれば――」


「すれば？」


「とても運動のできる体ではないはずです。特訓なんて論外。
尤も――本当に私の知る彼だとすれば、ですが。」


そのことばにししょーがぐっとうめきました。


「もしや、俺の所為だって言いてェのか？」


「いえ、坊ちゃんは見た限り元気そのものですからね。私の思い過ごしでしょう。
ただ、一応大事を取って無茶はさせるべきではないかと。」


そういってセバスチャンは猫のほうへとあるいていきました。


ただひとりそのばにのこされたししょー。


「何だよ・・・・・クソッ、俺はただ――」

人形が笑顔を向けて、小さく首を傾げ。

どこからか、オオカミの遠吠えが聞こえる。