今が逃げるチャンスだ。両親が二人とも消える時間帯は大体把握していたから、前々から逃げる計画は立てていた。
　しかしながらここからが問題だ。最近は物騒なので、武器の一つでも持っていく方が良いだろう。足元に落ちている木の枝でも十分武器にはなり得る気がするが、それは心もとない。心もとなすぎる。むしろ一瞬で死ねる。
　そんな訳で今、私は倉庫の前にいる。ここなら剣の一本でも見つかるだろう。生憎剣術は習っていないので、殆ど独学となるのが欠点だけれどね。
　倉庫は家とは別棟になっていて、そこからよく爆薬とかをお父さんが持ち出していたのを覚えている。……何に使ったのか皆目検討もつかないけれど。
　案の定、正面からは入れないので裏の窓から入る事にした。二回くらい蹴りを入れればきっとガラスは割れる。所詮はガラスだ。
　ジャンプすれば届く位置に窓はあるので、楽に倉庫へは入れたが……。


　倉庫の中は相当埃っぽかった。

　まるで隠すように一つの長細い箱が置いてあった。開けてみると（無用心な事に鍵がない）黒光りする長銃が。

　箱には「シューティングスター」と名前が書いてあった。

　武器には申し分無く、幸いなことに弾丸も倉庫を探したら幾つも見つかった。恐らくそれを入れる為と思われるポーチも。一体何故こんな物騒なものが倉庫にあるのかあえて追求しないでおこう。
　そして私は蹴りを入れた窓から銃と弾丸の入ったポーチをつけていそいそと出ていった。


　しばらく歩いていると、背後から何か付いてきている事に気付いたけれど、完全に無視していた。無視している事がバレたのか、背中を小突かれた。