生命の暴走がこの世界でも過去にあったのか、はたまた完全な偶然か、
セルフォリーフに居た生き物と同じ種がメルンテーゼにも居た。
動くリンゴだ。

油断したつもりはないのだが、間合いを取り間違えた瞬間、本当にアーシェに話した逸話の通りに自分が吹っ飛ばされて、卯の花腐しは自分に呆れ果てて苦笑するしかなかった。

（先日アーシェから突然消えてしまったら、と不安がられたばかりなのに悪いことをした）


秋の嵐が近くに来ているらしく、夜半の風がごうごうと唸りを上げて森林の木々を揺らしている。
嵐は歓迎されぬものかも知れないが、
薙ぎ払う様な風が自分には心地よい。

体調は良くなってきている筈なのに、暫く前から何だか落ち着かず、
身体を横たえると、重く疲労がのしかかってくる。
眠りの淵に落ちるまでの短い間、
卯の花腐しは世界を駆け回る風の音に耳を傾けた。

昨日の今日で、まだ少し青褪めているようだ。

あまりの結果に影は肩をすくめて苦笑いしている。

水辺で一人疲れを癒している時、手前の茂みががさがさと揺れ、
人影が転がり出てきた。

そう言いつつ、周囲の様子を伺う。追手はまだ来ていないようだ。
身の安全を確かめた後、ほっと息を吐き話しかけた相手を確かめる。
相手の透き通るような白く淡い姿をやや不躾に眺めるとへぇと感嘆。