僕らは砂漠を行く。

トキサメと名乗る女性が一人。
だだっ広い砂地の真ん中で辺りを窺いながらそろりそろりと忍び歩きをする黒ずくめのその姿は生憎と……。
…僕が言えた義理でもないけれど、
「私は怪しいものです」といっているようにしか見えなかった。

何故か妙なシンパシーを覚えつつ。
どうにも彼女も王側の人間のようで。
僕達の口封じをしに来ようとしたのだろう。
秘密にしたいのかしたくないのか、喋ってはいけないことを喋りながら襲いかかってきた。

……その結果？
正直なところ何故ああなったのか僕にもよくはわからない。
いつものんびりしたパンディーさんが非常に

いや、訂正しよう。

異常に興奮していた。

いつも傍らにいるサラマンダーはどこへいったのか。
姿こそ見えないが、そんなことはお構いなしに火だるまになりながら
ぺろぺろとかなんだとかよくわからない雄叫びを上げて、
黒ずくめの女性に唯ひたすらに突撃していくあの光景を何に例えればいいのだろうか。
ちょっと僕には思い当たらない。

そんなこんなで、気がついていたらトキサメと名乗った女性はダウンしていた。
僕も何をしていたか記憶があやふやだ。
多分目の前の壮絶な光景に気をとられ過ぎていたんだと思う。

トキサメという女性は、聞いてもいないのに隠し通路のある方向をわざわざ教え、
そのままとぼとぼと砂漠の中を歩いてどこかへといってしまった。

彼女も恐らくは工作員や諜報員に属する存在なのだろうけど、それにしては迂闊過ぎやしないだろうか……。素性は明かすわ易々と敵に背を曝すわ挙げ句の果てに作戦の要所を漏らすわああなんだなんだこれじゃアわざわざ俺が僕である理由がねえっつうかそもそも俺が来た意味も無いというかああ違う違うまだ俺が出る時じゃない

パンディーさんと話し合って、何はともあれ、
存在を知ってしまったからには一度地下牢に行ってみた方が良いのではないかという結論に達した。
秘密の作戦…という言葉に僕としては嫌な予感しか覚えない。
地下牢、というからには罪人を捕えているはずだ。

そんなところで行われる作戦。

どう前向きに考えても、楽しいものである気が全くしない。そして罠などが仕掛けられていない保証もない。

どうするか考えている最中、ユニコーンを探しに森へ行っていたそばがきちゃんとも合流できた。
彼女もなんとか無事にユニコーンに会え、契約できたらしい。

久しぶりに三人全員そろったなあと思いつつ。

僕らは今日も砂漠を行く。