いらいらすることが多くなった。
どうしてだかはわからない。
セイレーンと契約してからずっと、そのセイレーンにかかりきりなのが気に入らない。
どうしてなんだろう。訳がわからない。ただ、レイラ君がいたときと似たような感情がずっと続いているだけだ。
そんなときだった。
「お姉ちゃん！」
後ろから、そんな声が聞こえたと思ったら抱きつかれていた。
･･･警戒はしていたはず、人間以外でも勘付く程度にはそこらへんは鋭敏なはずだ。･･･どういうことだ。
後ろをゆっくりと振り向くと、無邪気な笑顔を浮かべた少女が、僕と同じ、水色の髪をして、昔編んだセーターと、マフラーをした少女がそこにいた。･･･緑色の焦点の合わない瞳。
僕がぼんやりしていると、ヒナが走ってきて、少女にタックルを仕掛けてきた。
「コイツ、誘拐犯だよ！」
やっぱり姉さんだったのか。ただ、姉貴が僕に言っていた悪意のようなものは感じられなかった。
「なんのこと？どうして、いじめるの？ふえぇぇん。」
ヒナがぽかんとした顔で、少女を見つめていた。僕も訳がわからなかった。
「アタシね、お友達にいじめられたの、その前の記憶がないの。お姉さん達、アタシのこと知ってるの。」
･･･また記憶喪失か。都合のいいことだ、ちらりと後ろにいる姉貴を見たが、知らぬ存ぜぬといった顔だ。何かやったのだろうなと解釈しました。
「･･･でもね、お姉ちゃんのことは覚えてるよ！パティカおねえちゃん！アタシの大好きなおねえちゃん！このセーターもマフラーもおねえちゃんが編んでくれたの！大好き！」
無邪気にそういう少女を、放置するわけにもいかず、結局彼女を連れて行くことにした。
「あのね、アタシなんて名前かも分からないの。お姉ちゃん、なんて名前だったかな。」
「･･･エリスだよ。」
「そっかあ、いいなまえだな。うれしい！」

慰めるように、ヒナの頭を撫でようとする。

（眉間に皺を寄せ）

（福莉さんの淡々とした様子が意外だったのか、戸惑ったように俯いて視線を泳がせる。少しの間の後、顔を上げ）

君の話を聞き、ゆっくりと口を開く。

少し、考え込んで、