目が覚めると、俺は真っ赤な部屋に居た。
えーと・・・俺は行きに参加していて
パーティーを組んでる皆と一緒にキャンプをしていて・・・

夢か？

グルリと部屋の中を見渡す。
見覚えがあるような気もするけど
見た事が無いような高級そうな調度品。
俺が居るのも、ふわふわの布団とスプリングのよく効いたマット。
天蓋って言うんだっけ？天上も付いてる。
部屋の中でなんで天井がついてるのか・・・
意味が分からないけど
高級そうだって言うのはよく分かる。

『目が覚めた？って言うのはおかしな言いまわしだね。
　だってここはあなたの夢の中だから』

天蓋から垂れた薄い布の向こう側に
人の気配が現れた。
紅いフリフリのドレスを着て
丸っこい人形を抱えた少女が
面白そうに声をかけてきた。

『今回は・・・こういう風に見えているんだねぇ
　前回よりイメージが細かい部分まで出来ているのは
　慣れて来ている証拠ってことかな？』

「えーと・・・サラマンダー？」

『正解！さっきも言ったけど、ここはタケトの夢の中。
　こうやって交流して行けば
　私たちの芯密度も上がって行くかなぁと思ってね』

少女はベッドの端に腰かけて
話を続けた。

『あそぎの制御下から火の力が切り離されたから
　この箱の中に新しい力が取りこまれたんだよ。
　それがこの子！』

抱えていた丸っこい人形を差し出して見せる。

「なんだこれ？こんなのが新しい力？」

それは全体的に丸くてパステルトーンな黄緑色で
腹の部分は黄色とピンクの縞々で
背中に小さな羽が付いている。

『ほら・・・この間新しく契約したエンブリオだよ』

えーと・・・
こんなの契約したっけ？
その丸っこいぬいぐるみの正体を思い出そうと
顔を近づけて考え込む。
角があって牙があって
羽があって・・・
ミニドラゴン？なのか？
俺の中で1つの答えが纏まると
それを待っていたかのように
ヌイグルミは大きく伸びをすると少女の腕をすり抜けて
布団の上をヒョコヒョコと歩き回った。

『はい。今日の用事はこれで終了だよ♪
　この子がここに居る事を意識する事が出来た。
　これでまたタケトの力は強くなる』

少女は布団の上で寝転がっているヌイグルミを抱え上げると
用事は済んだとばかりに
さっさと天蓋の外へ出て行った。

「もう少し話をしようぜ！
俺、お前やそのミニドラゴンの事とか全然分かってないんだ。
教えてくれよ！この世界の事とか・・・エンブリオ達ことを。」

少女は振り返ると黙って反対側を指差した。
そこには大きな窓があって
外から明るい光が差し込んでいる。

『そうだね・・・タケトはこの世界の事を何も知らない。
タケトが世界の事を理解する事が出来れば・・・
その窓に光以外の景色が映るようになるかもしれないね。』

寂しそうな声で呟く。

『でも、タケトは頭が悪いから理解する事は出来なそうだなぁ。
　じゃぁ、宿題をだそうか。
　もし覚えている事が出来たら
　私かこの子に名前を考えておく事！』

「名前？もう決まっているんじゃないのか？
サラマンダーとミニドラゴンだろ？」

『それも名前だね。
　でも、それは私たちの名前であって私の名前では無い。
　そしてそれは、この子たちの名前であってこの子の物ではない』

「なんだよその謎かけみたいな言い方！
もっと分かりやすく言ってくれよ！」

急に眠気が襲ってきた。
頭がクラクラする。

『覚えていたら・・・あそぎに名前の事を聞いてみると良いよ。
　ってか、タケトって魔法使い寄りの能力のはずなんだけど
　ホントに頭が悪いよね♪』

反論しようと思ったけど俺は眠気に勝てずに
意識が遠のいていく。
名前を考えよう・・・
それが宿題・・・だ・・・