[Another Side: Sherry]

カイルとフェリオは連携により相手を追い詰め、連続攻撃を浴びせる――

怒涛の攻撃に耐えきれなくなったのか、シュリーカーはついに降参の声を上げ、
目を回しながらふらふらとその場から逃げ去った。


終わってみれば危なげない勝利。
先程までボロボロになっていたとは思えない動きに私は驚くばかりだった。
正直な所を言うと、初めは二人を庇いながらどう戦おうかと思っていたくらいだったのに。

そんな私の内心などどこ吹く風――って所かしら。

戦闘を終え一息付く二人にそう提案し、私達はしばしの休憩を取る事にした。



〜・〜・〜・〜・

二人の手当を終え、私達はようやく落ち着くことができた。
あの非常に危険な状況から逃れる事ができた安堵からか、自然に笑みがこぼれる。

本当に疲れていたのだろう。
二人とも顔は緩んでいるものの、身体は既に横たわっている。

私達はしばらくの間、森の木陰に横になって身体を休めた。



〜・〜・〜・〜・

暫くして疲れた取れてきたのか、カイル達はそんな話を始めた。
しかし、あまりいい案は出てこないみたい。
それなら、と私はその話に参加する。

突如会話に参加した私に驚く二人を尻目に私は手持ちの『玉』から黒板を取り出す。

突如現れた黒板に驚く二人。
期待通りの反応にちょっと頬が緩む。

私はチョークを手に取り、黒板に絵と文字を描く。
一通り描いた所で今度は指示棒に持ち替え、黒板をトントンと叩く。

一通り説明を終え、私は二人の様子を伺う。

……ちょっとだけ照れくさいので簡単に答える。

そう言って止める間もなく飛び出したフェリオを私達は慌てて後を追いかけた。



〜・〜・〜・〜・

私はそう言って、『玉』からある物を取り出す。

カイルは印章を見ながら残念そうに言う。

私達ふわもこ族は確かに外部の力を吸収する事で新たな力を得る事ができる。
これは言葉でいう程簡単な物ではなく、様々なリスクを含んでいる。
例えば持つ力同士の干渉による変化・消失・暴走等がある。
その為に私達は吸収する力の選択には慎重になる。

カイルがそれを辞退したのは恐らく彼は獣寄りの性質を持つために精霊の力を得る事による急激な変質を危惧したためだろう。
……それは私にとっても同じ事で、この力は今の私が持つには手に余るものだと思ってる。

その言葉から、表情からフェリオの気持ちの強さを感じる。
この様子なら多分問題はないでしょうし、これ以上私達が何かを言うべきではないでしょう。

印章を渡した後、私とカイルは少し距離を置く。

私達ふわもこ族が行う力の吸収は多くの場合はそれを食べる事によって行う。
今回も例にもれず、フェリオは印章を口に含み、そして飲み込む。
そして、フェリオは目を閉じ、体内に含んだ力を取り込む事に集中する。

しばらくすると、フェリオの身体が緑色に淡く発光する。力の吸収が始まったみたい。

次にフェリオの周りを風が取り囲み――ううん、これはフェリオから風が発生して彼を取り巻いている。
風の強さに比例して緑色の輝きが増す。

そう、あの印章をずっと持っていた私が感じていた力よりずっと大きい力がフェリオを通じて取り巻く。
印章の他に別の力が働いている……？

ここまで大きい力だとフェリオが危ないのでは……？

不安が表情に出ていたのか、それを見たカイルはしっかりとした口調でそう言う。
その表情には信頼している様子が窺える。
……そういった関係はちょっと羨ましいわね。

私は黙ったまま笑顔で彼に頷く。
その様子を見て満足したのか、カイルは再びフェリオの方に目を向ける。
気を取り直して私もフェリオを見守る。よく見ると確かに余裕のある表情をしている。
取り巻く力に惑わされずにちゃんと彼の様子を見るべきだったわね。
うん、これなら大丈夫でしょう。

しばらくするとフェリオを取り巻く風が段々弱くなり、それに合わせて彼の身体を包んでいた光も消えていく。
そして、最後に穏やかなそよ風を残して消え、フェリオはゆっくりと目を開く。
私とカイルはフェリオに駆け寄る。

そう言いながらフェリオを突くカイルの表情は友人の成長を祝うかのように明るく、嬉しそうだ。

こうして私達はご飯を食べた後、明日の為に早めに就寝に至った。



〜・〜・〜・〜・



次の日、朝早くから平原を目指して移動を開始する。
幸いにも大きなトラブルもなく無事目指していたお医者さんの家にたどり着いた。

早速お医者さんにレスさんを看てもらう。
お医者さんが言うには薬を飲んで安静にしていれば数日で回復するとの事。

そう、お医者さんは診察料や私達の宿代の代わりにちょっとした依頼を提案してきたの。
私達としては訓練代わりになるし快く受けたってわけ。

その依頼は『暴走するスレイプニルを何とかする』というもの。
どうやら最近の一揆騒ぎに触発されたのかはたまた季節柄なのか好き好きに走り回っているみたい。
直接人を襲っている訳じゃないけどやっぱり危ないから何とかしてほしいとの事。

……楽しいのは結構だけど節度ってものを教えてあげないとね。


そういえば同行者がいるみたいだけどどんな人かしら……？

つちのこは引きずられている

つちのこは何かを隠した！