世界漂流十日目

世界は広大だ

最初の内は、この世界の状況に混乱するばかりであった。
何しろアメーバが喋ってたり、芋が襲ってきたりしていたのだ。
うむ、アメーバが喋っていることに比べれば何てことはない、とは思うのだが……

◆◆この世界について◆◆
○レインボーシェル
アメーバはまだ発声器官が発達する可能性がある。……たぶんある。
芋はそもそも顔があったのだから喋ってもおかしくはない。……いやおかしい。
だが、貝なんぞもはや形として進化を仕切ったも同然の物が、解る言葉で、喋っているのだぞ！？
……少し落ち着こう。

見た目はホタテ貝と呼ばれる部類の物に近い。
そして甲殻が開くと、中の真珠のような物が見え、何故か七色に光りおったぞッ！？
……なるほど、七色に光るが故にレインボーシェルというのか。
と、納得出来るわけもなく、と言うかどこで発声しておるんだこれ。

○サンドジェリー
第一印象は、砂まみれのスライム。
どこをどうやっているのか、砂嵐を起こす。
そしてそのドサクサに紛れて、なんと光る攻撃を放つのだッ！！

……もしかしてレインボーシェルの甲殻だけが退化（もしくは甲殻だけ進化しなかった）のがこれなのか？


○ミニドラゴン
ミニとは言えドラゴン、竜族となると思い出されるのはつい先日エンブリオとして手に入れたワイバーンも一応竜族だ。
飛竜族の特徴は二本脚で、腕に当たる部分が翼である。まぁコウモリのようなものか。
だが純粋な竜族となると、そのような微妙な変化ではなくしっかりとトカゲに羽が生えた形となっている。

……などと書くと、半竜族である知り合いが怒りそうだが。

このミニドラゴンとやらは、他と同じく喋る。
暇だと襲ってくるらしい。──小さいのに。
喋るがやたらと渋く喋る。──小ッさいのに。
そして何故かこれがエンブリオであった。──こんな小ッさいのに。

私の世界の竜とは、優に千年を超える寿命を持つ長寿系異族にして、人としての係累を一切持たずに人類種と認められる唯一の存在である。
また半竜族というのも居り、どこをどうしたのか知らないが竜の血を受け継ぐ人類種である。
こちらは見た目ほぼ人であり、一時的に竜になれる、らしい。見たことはない。
ただまぁ、どちらの種族も絶滅危惧種指定ではあるのだがね。
やたらと高いプライドと長い寿命の所為で子孫を作らず寿命を迎え、
「あ、いけね。俺子孫作ってねぇや」
等と今際の際に喋るそうだ。
実に阿呆な話で冗談とも言われるが、これが本当の話だから困った種族だ。

◇◇同道する仲間について◇◇
○ギラ
煙管に少々細工をして貰い、何やら魔力とやらを入れたらしい。
……魔力と言えば世界三大不思議の一つと言われておるのだが……世界が違えば謎でも何でもないと言うことか？


○ヴァンエッタ
私からしたら道に迷ってあっちこっち彷徨ってるように思えていたのだが、どうやら方々から情報を仕入れて歩いていたようだ。
うむ、旅慣れた者は違うものだな。
まぁそれでも、この世界のこの異様な気候風土はおかしいようだが……