前回までのまとめ：
お嬢様（仮）が私の傍を離れたくないそうです。┐(´ー｀)┌

　自らも計り知れない感情を持て余し、眉を寄せながらの言葉に彼女の表情が一瞬強張った。
　思考を沈黙に変えたような空気の中、もう一度首元を彩る花に視線を向ける。
　糧とするのは生気か、肉体そのものか。
「いっそ解呪の方法を探すより、術者を探した方が早いかもしれませんね」
　お嬢様(仮）が武器を手に取る合間に呟くが、その思案も彼女の言葉によって吹き飛ぶこととなる。


　作業を見て居たい　→　貴方の傍を離れたくないの。


（デレきたあああああああああああああああああ）


　上目使いも大変可愛らしいですお嬢様(仮）。
　小首を傾げるその角度も毎回同じように見えますがどうでもいい事ですね何せ可愛いんですから。
　可愛いは正義。
　よし。

　胸にあてる手を、っし、と極数ミリ肘だけ引く事でガッツポーズとして一礼する。
「長丁場になるとは思いますので、どうぞお寛ぎ下さい。
　すぐにお茶も用意致しますので」
　在り合わせのもので申し訳なさそうにする私に謙遜と共に礼を向ける彼女は相変わらず優しい。
　それこそ数日単位での作業を覚悟しなければならないだろう。
　一先ず彼女の居心地がいいようにと環境を整えてから、まずは何をするかを考える。
　設計書だろうと妥当な場所に落ち着いた所で、現物を見ながらの聞き取りへ移行した。

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「やればなんとかなるものですね」
　出来上がった金の杖（2本目）（お嬢様（仮）命名）を眺めながら頷く。
　慣れない作業で痛めた手指は手袋に包まれて見る事は叶わない。
　少々熱を持つ患部に特に表情を変える事なく、斜め前に座る――今は少し舟を漕いでいる彼女を眺める。
　宣言通り、彼女はずっとそこに居た。
「楽しい時は短く感じるといいますが」
　充実した時間だったと吐息まじりに首を振って、出来たばかりの杖を柔らかな布の上にそっと置く。
　その手で新たな紙を一枚引き寄せた。
「美しい人を護らなければなりませんからね」
　構想はある。ノウハウもある程度は出来たから、多少は早いだろう。
　やる気も新たに、設計図を引くべく新たな線をひき始めた。