ポニー並の小柄な馬型エンブリオを抱きかかえながら、坂本がテンションを上げている。
私の方はと言えば、気分は下降気味だ。元よりテンションの高い性格じゃないし、そもそも彼のテンションについていける状況下でもない。
むしろ、「腐肉と坂本の二重助手」という状況に未だ納得いかない。不満もいいところだ。

こんな状況下に追い込んだ忌々しい張本人が、足元でぽつりと声をかけてきた。

…確か彼はこいつに大切なものを横取りされたんじゃなかったか？
異世界…研究？参加アカウント、だったか何だったか。それが無いと異世界に来れないと言っていた。
彼のものだったそれを私が使っている…いや、知らない間に使わされてしまったのだから、彼とてまったく無関係でもないだろうが。

…坂本だってこいつと同じ魔法使いなら、私がここに来た方法も帰る方法も分かる筈。

いい加減、こいつの秘密主義に付き合うのもうんざりだ。彼に事情を話して、元の場所に帰してもらおうか。
…いやいや、そんなことしたら寝たきりの方の私の身体がどんなことになるか…

坂本が私と腐肉を交互に見つめて頭を抱えて絶句する。頭を抱えたいのは私の方だ、ちくしょう。

いいのか、それで…とも思うが、今まで会った一揆関係者を見るに、一揆運動も捉え方は人それぞれかもしれない。
勝手に言葉の響きでもっと深刻なものを想像していたのだが、参加態度も驚くほど軽いノリだった人も居たし。