［基本］OK.　［戦闘］OK.　

　ふと、空を見上げた。
　いつものハザマの空だった。

　近くには、いずみちゃんと、紗織おねーちゃんがいる。

　何かが変わった気がする。
　何かが終わった気がする。
　でも、何かも変わらなかった気もする。

　よくわからない感覚のまま、幼き少女は短剣を振るった。

　変わるのはいい。
　　　　・・・・・・・
　でも、変えられるのはごめんだ。
　　　　　　　　　　・・・・・・・
　私たちの生き様は、私たちのものだ。

　だから、ユーキはその短剣を振るった。
　何かが、断たれた音がした。
　世界が、割れる音がした。

　空を見上がれば、月があって。
　その光を遮るように、大きな船があった。星を渡る、大きな大きな船。
　ユーキの良く知る、フーベルの船だ。その縁には、学ランの少年と、綺麗な碧の翼が見えた。

　気付けば、隣には紗織おねーちゃんと、フーベルが居て。
　それは、いつもの３人だった。

　くるりと少女は振り返る。誰もいない筈のそこに、ユーキは小さく手を振った。


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「……元気でね」

　そんな言葉がぽつりと零れた。
『私』はどうやた旅立つらしい。感覚でだけれど、それが分かった。
　私は『私』の一部なのだから、完全に離れるなどできないのだけれど『私』はそれでも特に気にするつもりはないらしい。なるほど、私らしい子だ。
　ならば、私も私らしく、日々珈琲を淹れよう。
　いつもの常連二人が、珈琲を飲んでプリンを食べて喜んでくれている。
　純喫茶裏取引の、ごく稀によくある光景だ。
　この光景は、きっと『私』も羨む、そして私だけの光景だ。
　私もきっと『私』の作り出す光景の中には羨むものがあるだろう。
　　　・・・・・
　だがそれでこそ人生というものだと、私は思う。

　妬んで、悔しがって、欲しがって。そして足掻くのだろう。

　私のように。彼女のように。あの子のように。

　そしてその末に出会って、生まれたこの光景こそが、私にとっての宝物だ。
　似合わないかもしれないが、この光景が手に入る為なら、私は何だった叩き斬り伏せる自信がある。

「すいませぇん、ここやってる感じですかぁ～？」

　そんな事を考えていたさなかに響いた言葉と共に、喫茶店の扉が開く。
　見れば、男女のペアの高校生が窺うようにこちらを見ている。
　女の子の、サングラスの向こうにある煌めく瞳と、目が合った。

「ええ。開いてるわ。いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」

　言いながら、少しだけ予感がした。
　この出会いが、また一つの大切な光景を生むだろう。そんな予感が。