［基本］OK.　［戦闘］OK.　

　この戦いの中で私は、夢を実現できるだけのものを掴めたか。
　私自身は、この問いにはいいえと答える。
　結局、振り回されただけだ。流されただけだ。
　数多の"私自身"に否定され、
　この世界に閉じ込められて、
　わけもわからぬままに戦いに放り込まれて、
　この戦いに勝てば、夢を実現できるかもしれないと、
　希望らしきものを見てがむしゃらに走って、
　今度は見知らぬ何かに「勝てなければ自我を失う」だなんて脅されて、
　自分の目的も何もなく、ただ迫り来るそのバッドエンドから、
　がむしゃらに逃げ惑って。
　実感も何もなく、どうやら勝ったらしい、ということだけ聞かされて、
　勝った感じなんていっこも無くて、
　未だに結果と未来を疑っていて。

　スワップなんて、嘘なんだろう？
　全部嘘っぱちなんだろう？
　きっと、金城紗織という存在は、私ではない。
　イバラシティという世界に幸せに暮らす、ただの一人の女性。
　その本体だとか、本当は不幸な生い立ちの子供だとか、
　最早そんなものは関係ないのだ。
　私は彼女の記憶を持っているけれど、
　彼女は私を知る由もない。
　彼女は、金城紗織は、きっとこれからもただ普通に生きていく。
　彼女に限らず、イバラシティを生きている人々は、
　ハザマだとかアンジニティだとか、何も知らずに生きていく。

　そう、信じさせてほしい。

　例え、ハザマに来たイバラシティの人々と、
　イバラシティに居る本来の彼らとが切り離されようとも。

　"その時"にならないと何も分からない。
　ただ、これまでに出会った全ての人が、
　――幾度か戦ったそう歳の変わらない少年少女。
　――人間の子供を連れ立った竜の群れ。
　――虚像の一家と少女。
　――不気味な眷属と青年。
　皆が、生きて先へと進めることを、
　未来が断たれることなどないことを、
　祈ることしか、私にはできない。



　少なくとも、今の私は。
　隣に、何よりも大切な人がいる。
　絶対に失いたくないこのことが、
　崩されることなくそのままであることが、
　先へ進んでいける確かな道しるべだから。



　無力な私を、どうか許してほしい。
　自分のことで精いっぱいな私を。



　手を伸ばす。
　手を掴む。
　こんなにも細くて頼りない腕だけど、
　置いていくことなんてしないよ。