［基本］OK.　［戦闘］OK.　

【アンジニティ　沢野玲子のイバラシティへの移動前日】



「――ふーん。じゃあ、『衛護』の血族にするんだ」

「ええ。死者ではないから私の血族にはできませんし、片方は犬ですからね。あの子も快く受け入れてくれました」


これから大仕事をする事になるにもかかわらず、私の友である『欺瞞』はそれを感じさせない。いたっていつも通りの調子で雑談に応じてくれた。


「色々、無理を言ってすみませんね。お世話になります」

「や、それはいいんだけどさ。あのコの家族はもう用意してるし、書類その他も揃えてあるから後は関係者各位に記憶を捻じ込むだけだから」


既にある程度の準備は済ませてあるらしい。相変わらずの手際の良さだと感心していると、探るような眼でこちらを見ながら。


「でも、だからってあなたがお手伝いさんする必要はないじゃない？
　血族にしたのもそうだけど。ホントに可哀想だったから、って理由だけだったの？」


さすがに鋭い。騙す気があったわけではないが『欺瞞』たる彼女に嘘は通じない。
私は素直にもう一つの理由を伝える事にした。


「私の理由は本当にそれだけでしたよ。少し手を貸してあげてもいいかな、程度のものでしたが…『衛護』に、助けてほしいと願われたもので」

「…『衛護』が？」

「ええ。あの子がおねだりするのは珍しい事ですし、元々私も手を貸してあげてもいいかな、くらいには思っていたので手を尽くしました」

「主に尽くしてるのはアタシ、アタシですー」


口を尖らせながら挙手をする友人の様子が面白くて、思わず笑みを零しながら続ける。



「ええ。わかってます。頼りにしていますよ。
　…まあ、そういうワケですから、傍でお守りするつもりですよ。従者としてね」

「ワールドスワップも？　前はリセットされたけど、ほんの数年先にまた起きるんでしょ？」

「そちらはちょっとだけお手伝いをするつもりですが、基本、不干渉のつもりでいます。
　アンジニティの方々も真剣にやってきた事ですからね。横合いから私みたいな部外者が面白半分で引っ掻き回すのは、あまりよろしくないなと思いまして」


そう言うと、友人は呆れたような目で私を見る。


「部外者の干渉でまたリセットされたらどんな不具合起きるかわからないし、その調整までやるのはさすがに面倒すぎるから、でしょ？」

「ふふ、久々にお嬢様に仕える従者をやるわけですからね。発言にも気を付けないといけませんので」

「だからってアタシの前で心にもない嘘つくかね…」


おもむろに、友人が立ち上がって伸びをする。


「ああ、そろそろ行くんですか」

「まあね。そっちも準備はいいんでしょ？」

「ええ、いつでも」

「ん。じゃあ、また終わった頃にでも」


ひらひらと後ろ手を振りながら、立ち去っていく。
ワールドスワップが終わったその後に、果たしてイバラシティは。アンジニティは。ハザマは。お嬢様は。どうなっているのか。

不安と期待が混ざったような心地で、消え行く友人の背を見送った。

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【送られる事のなかったビデオレター】


「……アレから考えたわ。色々とね。
　こうして二度目の生を掴む機会を得られたのは、私にとって良かった事なのかって。

　…結論を先に言うけど。良かったわ。とっても。
　それで今、色々と困った状態になるとしてもね。
　
　あなた達と出会えた事は、私にとって2番目に良い事だった。
　…あなた達は想像ついてそうだけど、1番目はあのコと出会えた事よ。

　
　今だから言うけど。
　私ね、私はあのコの危機の時にだけ出てくる存在になろうとしてたの。
　だから沢野玲子の名はあのコに譲って、私は異能の人格という事にした。
　いつ消えても良いように。私が誰かを傷つけたり怖がられたりしても、あのコが被害を受けないように。

　…小学生の頃は、それで上手い事やれたのよ？
　あのコは知っての通り人懐っこいし。勉学は私がサポートできたしね。
　あのコも友達を作れて、毎日楽しそうに過ごせて。
　私はそれを傍から他人として見ているだけだったけど、でも、間違いなく幸せだったわ。

　…でも。あなた達と会えて、友達になれたのは。
　多分、それとはまた別の幸せだったと思う。私にはよくわからないものだけど。
　あなた達にとっては大した事じゃないでしょうけど。
　勉強会をしたり、一緒にゲームをしたり、花火をしたり、パーティーで過ごしたり、釣りをしたり…。そういうイベントだけじゃなくて、図書館で話をしたり。一緒に帰ったり。いえ、一緒にいられるだけでも私にとっては大切な思い出だったのよ。

　……前置きが長くなったけど。いざ言うと…なんだか嫌ね。これが最後になるみたいで。
　でも、私は最後にするつもりはないわ。
　あなた達と一緒に、イバラシティに帰ってみせる。

　だからこれは、最後じゃなくって。一区切りだから、改めて私の気持ちを言葉にする決意表明……。

　…………。

　ありがとう。あなた達の事、大好きよ。

　……あなた達がどう思うかは知らないけど。私はきっと、死ぬまであなた達の事を大切な友達だって思い続けると思う。
　だから、これからもよろしくね。

　……さて。言いたい事は言ったわね。
　誰かがこれを見る事なんて、あるのかしら。
　もし見てるのが私の知らない誰かだったら、余計な事はしなくて良いわよ。これは私のために残したものだから。

　もしこれを見てるのが、私の友達だったなら。
　……どうもしないわね。言いたい事は全部言ったし。笑うなり、なんなり、好きにするといいわ。きっとあなた達は、そういう意味では笑わないんでしょうけれどね」

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【ハザマにて　沢野玲子から"誰か"に向けて】

「負けちゃったけど狩りは楽しかった。みんなと一緒に色々できて、良かったよ。
　…でも、ボク達はまだ死んではいないから。また生きるために狩りをしないと、だよね？

　大丈夫！　もし戦えなくても、ボク達が守ってあげるから！
　皆で一緒にイバラシティに帰ろうね！

　…それとも、どこか別の世界にイバラシティを作った方が早いのかな？
　レーコはアンジニティにイバラシティを作るって言ってるけど……電気とかお水とか、あるのかなあ。
　でも、アンジニティの人も手伝ってくれるかも？

　……うん。そういうのはよくわかんないや。
　でも、レーコも楽しそうだし、いっか！

　あっ。えーとね、だから。
　これからもよろしくね！

　じゃあ…これから何しよっか？」

ENo.194 リンネ とのやりとり


ENo.545 東堂玄樹 とのやりとり


ENo.869 あかり とのやりとり


ENo.1440 コハル とのやりとり

特に何もしませんでした。