会鉢 結衣(えはち ゆい)
性別 : 女性
年齢 : 15才
誕生日 : 1月2日
異能:半不随意、かつ極めて挟い範囲におけるテレキネシス、あるいは不明な操作。
人物:
なんてことない女子中学生。ただ普通に勉強して、ただ普通に遊んで、ただ普通に生きている。
異能はおそらく「頭部保護」。
……であると、会鉢は考える。
14歳の夏。
何気なく空を見上げた会鉢の鼻先に、高層ビルから落下してきた巨大な鉄骨が触れた。
全き死……を思う間もなく、次の瞬間。鉄塊は眼前から消え、ただ夏の青い空が広がっていた。
「夢でも見たのかな……って思った。でもね」
それ以来、会鉢の頭部は、あらゆる物理的損傷と無縁になった。
飛んできたソフトボールは途中で軌道を変えたし、二度の落雷は音もなく霧散してしまった。鉄骨や植木鉢が十数回か落ちてきた気がするが、気づかぬ内になんか助かっていたのでよくわからない。
「……あの時、なにか間違えちゃったのかな」
会鉢は最初の、あの鉄骨が落ちて来た時を思い出す。
「あそこで私は死ぬはずだったのかもしれない」
「なのに」
何かが会鉢を殺させなかった。それは今でも会鉢を守っている。
世界はそれを良しとしていない。会鉢は殺されようとしている。
「……ふふっ」
何であれ、会鉢は嬉しかった。
何者かが会鉢を守っていることも。
何者かが会鉢を殺そうとしていることも。
なんてことない女子中学生。ただ普通に勉強して、ただ普通に遊んで、ただ普通に生きている。
優れたところはあんまりなくて、劣ったところはいっぱいある。
ほかの全てに埋没し、社会に心を擦り減らし、忘れ去られてゆくだけが、何でもない自分の人生のすべてだと考えていた、ちょっと心配性の会鉢にとって。
ほかの誰もがきっとそれぞれの人生の主人公なのに、自分だけは主人公になれない脇役なんだ、と考えていた、少し空想家の会鉢にとって。
ずっと誰かが自分を見ているということは、この上なく幸せなことに思えた。
「おはよう。今日もよろしくね」
会鉢結衣は、人生の春の只中にある。