［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

【かつて勇者と呼ばれた男】

自分の変身はどうするのか。
そうざりおが問えば、俺がブレイブチェンジャーを起動します、と大森さんは即答した。
博士ってやつがブレイブチェンジャーの調整に時間をかけていたとのことだが、ちょっと準備が悪いんじゃないか。
しかしここまで苦労してきたのに、劇的なイベントもなくなんともあっさり解決するものだ。

埜野ののの……本来のブレイブチェンジャーを持つ相棒、彼女は今どうしているだろう。
自分がいなくなり、心配しているだろうか。

「とはいえ、もうちょっと早く合流できればよかったですかね。
　体はもういいんですか？ まだ片腕ですが」

「大丈夫大丈夫、体力全開だしハサミはそのうち生えてくるさ」

「そうですか、じゃあ行きましょう」

アルキメンデスと遭遇した森。彼の位置情報はまだそこにある。
3人は次元タクシーに乗り込んだ。

鬱蒼と茂る森。それでも、最初に来たときよりは幾分か空も明るくなり。
よし、と気合を入れて進もうとするざりおを大森さんが呼び止め。

「待って、ここで変身していきましょう」

「は？ なんでだよ」

「あれが変身中に待ってくれると思いますか？ フィクションじゃあるまいし」

「ま、それもそうか……」

肩を竦める大森さん。ざりおも同じように肩を竦める仕草を見せて。

「じゃ、じゃあ……」

ついに自ら変身するときが来たのだ。アナはすうっと、息を吸い。
大森さんとアナは、アプリを起動する。

「へっ、……へっんっ、」

ざりおは片方だけのハサミを掲げ。

「いくぜ！」

「っふっ、」「変身ッ！」「しんっ！」

蒼と紅の光が交差して。

「まっ、まひょしょ、」「紅殻戦士ザリガイザー！」

「しょうじょ、エモート・ブラ、ぶらふへっ」「参上ッ！」

「ブライトねしゅっ！」

光が消える。
そこの立つのは、蒼と紅の戦士。

「ご、ごめん、ぐだぐだ……」

「ま、初めての名乗りにしちゃ上出来さ」

ザリガイザーは赤面するアナの肩をぽむんと叩く。

「さて、ヒーロー VS 勇者、リベンジマッチってとこか」

そう言って、アナを見下ろし。

「たぶん、心の声が聞こえた、とかいう能力の発動条件は触れることだ。
　アナはあいつに近づいて、どんな形でもいい、あいつに触れろ。
　俺は全力でお前を守る」

「……わかった」

緊張した面持ち。ザリガイザーはもう一度肩を叩き。
3人はアルキメンデスのもとへ向かう。

「おっと……これは」

大森さんは脚を止め、二人を制止する。
木に黒い触手が無数に絡みつき、その根元には、目を閉じるアルキメンデス。湧き出る黒い陰が、彼の身体をほぼ呑み込んでいる。
大森さんでなくとも、異常な状態だと一目で分かる。

「暴走がかなり進んでいます。やばいですよ」

大森さんは死角に下がった。

「わかった」

それを聞けば、ザリガイザーはハサミを構え。
次の瞬間、陰が触手となり襲い来る。

「ブレイブバブルス！」

ハサミより放出される大量の泡
触手にまとわり、動きを鈍らせ。

「いけアナッ！」

「あっうん！」

アナは触手の合間を縫うように走る。
軽い軽い、体が軽い！
この触手の動きなら十分潜り抜けられる。
ザリガイザーを信じて、一気に突破しよう。
振り下ろされる触手を蹴り上げ、薙ぎ払わんとする触手を跳び越え、突き上げる触手を踏みつけて加速する。

「ブレイブブレイド！」
「ブレイブバレット！」

ハサミから水の剣を具現、触手を斬り裂く。
遠距離の触手が動けば、水弾を放ち後退させる。

両腕揃っていれば同時にこなせるものだが、それでも十分凌げる。
触手の動きはぎこちない。
アルキメンデス自身が今の状態に適応できていないのもあるんだろう。

アナは斬り拓かれる道をひたすらに突き進む。
目の前に迫る触手。後方から放たれる水弾が吹き飛ばす。
ざりお……ザリガイザーはちゃんと技名も考えていてすごい。
自分もあとで何か考えよう。
そう考えられるくらいには心に余裕がある。変身によるものもあるだろうが、全力で戦ってくれているザリガイザーのおかげだ。

触手の間を走り抜け、アルキメンデスの懐に入り込んだ。
額に手を触れる。
視界が、黒に染まる。


一瞬の静寂。
刹那、頭に流れ込むのは無数の断末魔が混じったような、悍ましい声……あのとき聞いたものに近い。
頭が割れそうだ、痛い、苦しい、この場から逃げ出したい……
――いや、落ち着け、大丈夫、危害は加えられていない。恐らく、ざりお……ザリガイザーが食い止めてくれている。

肌を撫でるのは生ぬるく、不快な風。
ここがアルキメンデスの心の世界なんだろう。そこに自分が入っている、これもエモート・ブライトネスの力だろうか……。
まずは冷静にならなければ。なんでもいい、目を閉じて、心を落ち着かせることだけに集中して……

「よう、姉ちゃん」

そうしていると、響く声とは明らかに別の声がした。
目を開けると、茶髪の少年が立っている。姉ちゃん？ 弟はいるが、こんな子は知らない。どういうことだろう。
自分の弟はもっと、……いや、おかしい、顔が浮かんでこない。まさか忘れるはずが……。今はそんなことを考えている場合じゃないか。
少年が指さす先にはドアが一つ。わけがわからないが、ここに入れということか。

ドアを開ける。中は6畳ほどの普通の部屋。
声はぴたりと止まり、静寂に包まれる。
漫画が乱雑に置かれたベッド、コードの絡まったゲーム機、机上のノートパソコン。ここは、自分の……アナ・モーリスの部屋だ。
落ちている漫画を一冊手に取り、ページをめくる。……白紙だ、なにも書かれていない。
そうか、と腑に落ちた。最近も映画で見た……これは漫画やアニメでよくある演出だ。あくまでここは心の世界。本来人間は知覚することのない領域だから、記憶の中の場所を当てはめているんだ。
だから今ここにあるもの、すべてが仮初なのだろう。ひとまず、心を落ち着けられるのはありがたい。

で、あれば。
これからここで何をすればいいのだろうか。ベッドに腰掛け、部屋を見渡す。
こういう所にはかならずなにか、明らかに異質な……ヒントになるものがあるのがお決まりだ。

ベッドの下を覗くと、見慣れない本が一冊落ちていた。
手に取り、ぱらぱらっと捲ってみる。なにか文字が書いてあるがよく分からない。しかも、分厚い本でもないのに、捲っても捲っても終わらない……まるで無限にページがあるようだ。
これを解読できれば、アルキメンデスの事がなにかわかるかもしれない。

本を持って机に向かい、ノートパソコンを開く。
パソコンで紙の本を読み取るなんて馬鹿げた発想だが、ここは自分のイメージが具現化しているだけの心の世界。なんとでもなるはずだ。
SDカードスロットに本を添える。……そのままパソコンの中へ溶けるように吸い込まれていった。

OK、いける。画面に"Archimendes"という名のフォルダーが開かれた。
その中には、更にたくさんのフォルダー……先頭の方に"Ansinity"というフォルダーがある。ということは、これは彼が渡り歩いてきた世界の記憶をフォルダーに分けたものか。

"Ansinity"をクリック。0001.01.01というファイルから、0001.01.02……03……04……と並んでいる。
この数字の並びは年月日だろうか。ざっくりと、彼がアンジニティに落ちた日を0001.01.01と設定した、1日ごとの記録……ということか。

スクロールバーを下げてみる。


0017.06.28


0050.10.04


0094.03.10


0101.01.01


…………

あっという間に100年を超えた。
背筋が寒くなる。彼は100年以上もアンジニティに……。いや、ファイルはまだ無数に並んでいる。いったいどこまで続いているのだろうか。
深呼吸をひとつ、ふたつ。意を決し、スクロールバーを一気に引き下げる。


0203.04.29


0691.07.22


0999.12.31


1102.02.28


…………

1000を超えてしまった……数字の羅列はなおも続いている。

「……この人、1000年以上も、アンジニティに……？」

想像もつかないような果てしない時間、ここまでくると逆に実感もわかないが……。彼はこの無機質な数字の羅列を、どのような想いで生きてきたのだろう。
一度閉じ、並ぶフォルダーをスクロールしていく。それ以前の記録の中で、なにか重要そうなものがあれば……。
ふと、1つのフォルダーが目に留まった。

"True World"
本当の世界。
恐らくこれが、彼の……アルキメンデスの故郷といえる世界の記録だ。

ファイルをクリック。エラーが出た。
もう一度クリック、またエラー。

"Tawamuregaki"
ならばとクリックした、1つ上のファイル。これもエラー。他にも試したが……そのすべてがエラーとなり、開けない。
開けたのは、"Ansinity"のファイルのみ。
ロックされている……、つまり、記憶を封じ決めているか……彼自身が拒んでいるか。

なんて考えていたら突然、パソコンがガタガタと揺れて……本が吐き出された。
先ほど空間から響いていた声が、今度は本の中から聞こえる。
怯えているのだろう、と思った。本を拾い上げて、抱きかかえ。

「大丈夫、大丈夫だから」

黒いしずくが一滴、零れ落ちた。


森の中、蠢く無数の触手。
アナがアルキメンデスに触れた瞬間、彼女は消えた。
あれからどれくらいの時間戦っているだろう。

斬っても、爆ぜても、無尽蔵に湧きだす触手。
ただがむしゃらに襲ってくるのみだが、それでも終わりの見えないこの戦い、体力は徐々に消耗していく。

触手を一本斬り裂き……体勢を立て直す間もなく直進してくる新たな触手。
体を捻り、なんとかかわす……駄目だ、もう1本来た！

「ぎゃっ……！」

触手に弾かれ、木に激突した。
なおも迫りくる触手は水弾でなんとか撃退するが、技名を叫ぶ余裕もない。
よろりと立ち上がり、見据える。
蠢く触手……突然、そのすべてがぴたりと止まった。
そのまま一瞬で縮小し、アルキメンデスの体に吸い込まれ……小さな黒いしずくとなって飛び出す。

「は？
　やったのか？ アナ……」

息を吐き、構える。まだ油断してはいけない。
黒いしずくは静止したかと思えば、地面に転がる何かに入っていった。あれは……自分の、ざりおの抜け殻じゃないか。あの時脱皮したものがまだ残っていたのか。
しずくが抜け殻の中で蠢く……もしかしたらこれはやばいやつかもしれない。
力を振り絞り、水弾を放つ。
それは黒いハサミに弾かれた。
蠢くしずく、抜け殻は形を変えていき……

「……マジかよ」

立っていたのは、黒いザリガイザー。
ハサミを向け、黒い弾が放たれる。
駄目だ避けられない、まだ体のダメージが……

瞬間、風が吹き抜け。かまいたちのように斬撃が走った。
弾は真っ二つになり、地に落ちてどろどろに融ける。
それを踏み抜き、ザリガイザーの前に立つ背中。

「……お前、っ……！？」

「下がってろ、あとは俺がやる」

男は黒いザリガイザーを見据え、剣を構えた。

ItemNo.30 桃色の果実 を食べました！
　体調が 0 回復！（30⇒30）
　今回の全戦闘において 狂30 が発揮されます。

幻術LV を 5 UP！（LV90⇒95、-5CP）
付加LV を 5 UP！（LV86⇒91、-5CP）

ItemNo.31 ものすごい木材 から射程1の武器『エモートステッキ』を作製しました！
　⇒ エモートステッキ／武器：強さ512／［効果1］攻撃40 ［効果2］－ ［効果3］－【射程1】


ItemNo.31 エモートステッキ に ItemNo.8 榧 を付加しました！
　⇒ エモートステッキ／武器：強さ512／［効果1］攻撃40 ［効果2］防御40 ［効果3］－【射程1】

ItemNo.31 エモートステッキ に ItemNo.18 丸太 を付加しました！
　⇒ エモートステッキ／武器：強さ512／［効果1］攻撃40 ［効果2］貫撃40 ［効果3］－【射程1】


◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『ウシ区 R-4：チェックポイント《古寺》』へ採集に向かうことにしました！

［792 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［433 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［464 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［201 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［399 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［326 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［267 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［197 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［117 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［147 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［152 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［310 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［49 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［225 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［106 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［110 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［112 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［56 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［88 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［81 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［16 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［45 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［92 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［21 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

星空が映る。

　

微かな波音と共に、弦楽器の優しい音色。

　

　

　

星空のなかに、黒い裂け目。

　

その裂け目にいくつもの小さな光の玉が吸い込まれてゆく。

　

　

　




　




　

　

　

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