［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

昼に学校で購買の代り映えのしないパンを食ってるときに、
ああ、今日のパンなんか美味いな、と感じる日がある。

……前の席の若宮線引が財布を家に忘れてきている日だ。




「……違ぇんだよ、ニノ。聞いてくれ。
　昨日帰りにタコ焼き買ったときにケツに入れたまま帰って、
　そのまま家帰った後机の上に置いちまったから……」

何一つ違わなくねえか。それに俺に聞かせてどうする。
誰に向かってか独り言のような泣き言のようなことを言う若宮。

「……そんな可哀そうな俺に恵んでくれるパンの持ち合わせとかねーの？」
「生憎、購買で他人にやる用のパン売切れててな。
　菓子パン包んでた袋ならやるけど」
「菓子パンとの血縁関係０の赤の他人じゃねーか」

野良の生き物に一度食い物をやると癖になると聞くからな……。
それに、敗北者の顔を見ながら食う飯ほど美味いものはない。
敗北者の行く末にそれほどの興味はないが、一応聞いておく。

「……水原は？」

相良伊橋高校3-1の食糧庫。手からパンを出せる。昼食を忘れた者にとってはまさに女神だ。
若宮は眉根を寄せて教室を見渡しながら顎に手をやる。

「それが、さっきから探してんだけど教室いねーんだよ。
　まあ、でも流石にどっか別の場所でメシ食ってる女子追いかける男はなんかその、な。
　恰好わりぃじゃん……？」
「安心しろよ。
　若宮が毎日365日フルコース奢ってもまだモテないから」
「前世で何したらそこまでモテねえんだよ」
「今世で何もしてないからモテねえんだろ」
「正論で助走もつけずにぶん殴るんじゃねえよ」

正論、対若宮のダイヤ強いな。特攻入るらしい。今後もぶつけていこう。
そう思いながらパンを齧っていると、俺たちのやり取りを聞いてたのか横合いから声が掛かる。

「――アッハハ！！　ワカまたおヒル抜きぃ？」





これ以上ないくらいバカにした笑い声で思いっきり指さす女子。

相倉クミホ。3-1。
3-2を中心に形成されているギャルの主な生息圏からはみ出して、
3-1という特進クラスを生息地とするギャルの突然変異種だ。
このナリで成績は確か上から数えた方が早いとかいう割と無茶苦茶な女子だ。

……相倉と若宮って絡みあるのな。
相倉、若宮が苦手とするタイプの女子のはずだけど。
指さして笑われた若宮本人を見るとなぜかこっちを向いている。

「……いや、こんだけ可哀そうな俺に人差し指さして聞こえるように爆笑出来るって、
　ごんぎつねのラストで笑い死にするんじゃねえかこいつ」
「『若宮、お前だったのか』」
「『ぱぁん！ドサッ』」
「俺だって確認してから撃ってんじゃねえ！」
「きゃはは！」

俺のフリに続けて両手で銃を作って若宮に向けて撃つ相倉。ノリいいな。

まあ若宮は多分この反応から見るに、普通に苦手なんだろうな相倉。
まあ、優しい俺が少し助け船出すか……。

「……相倉からなんかメシ分けてやれば？」
「えー、エイトん、ワカにエサあげるとクセになんない？」
「なると思って、俺は厳しくしつけてるよ」
「お前らにとって俺は犬か何かに見えてんのか？」
「ほーら卵焼きだよーワカー。女子高生の手作りだよー」
「お前らにとって俺は犬か何かです。ありがとうございます相倉様！」

空腹に負けたのか女子高生の手作りという言葉に負けたのか、
相倉が箸で差し出す卵焼きを口で受け取る。

美味そうに食っていた若宮の動きが不自然に止まる。
相倉は気づかず、自慢げにふふんと胸を張って。

「意外っしょ、アタシ料理できんの。卵焼き超絶上手いんよ」
「………」

聞いてるのか聞いてないのか若宮は急に口の中を指で探り、何かを取り出す。
指先の白い破片を見ながら小さく呟いた。


「――カラ入ってた」


☆　　　★　　　☆　　　★　　　☆



翌日。

流石に二日連続では財布を忘れない程度には特進科だったようで、
今日はお互い朝購買で買ったパンに同時に口を付けようとした瞬間。

「ワーカァーミヤァッ！！！」

と叫びながら教室の端の方から弁当持って突撃してくる相倉に、流石にビビる。
俺の倍くらいビビったのか、ようやく一日越しにありつけた昼食のパンを、
思わず落としそうになりながら、若宮がこれ以上ないくらいドン引いている。
若宮ドン引。

「待って！　パン食うな！　その前に食って！
　ほら！　作ってきた！」

言いながら我が物顔で他人の席にドスンと陣取り、
可愛い包みに包まれた弁当を解いていく。
何のことか全然わかっていない男子二人はドン引きのなすがままで、
相倉は親が卵焼きに殺された敵討ちのような勢いで弁当箱をぶっ刺し、若宮の顔面に押し付ける。

「ホラ！！　卵焼き！！
　殻入ってないやつ！！」
「……い、いや、な、なんで……？」

一足早く色んなことにピンと来ていた俺は、あ、これ面白いなと思いながら、成り行きを眺める。

あの若宮と、あの相倉という組み合わせが横から見てる分にはなかなかに面白い。

「ホントは！！　上手いんだって！！
　カラとか！！　偶然で！！
　料理下手だと思われるのは、許せんし！！」
「いや、思ってねーから！！
　卵焼き自体は美味かったって、昨日言えんかったけど！
　カラは吐き出したけどちゃんとありがたく全部食ったじゃねーか！！」
「……違くて！！　それでもカラ入ってたら、なんかヤじゃん！？
　卵の一つも割れない感じなのってホラ、見た目通りだし！！
　そういうのじゃないんだよ、ワカッテ！！」
「何一つわかんねえ！？
　待て待て！！　そこに口はねえから押し付けんな！！
　ニノ、助けろ！！　友人が襲われてんぞ！！」

二秒ほど考えたが、助ける義理も理由もなかった。

……いやまあ、ホント意外な組み合わせではあるよな。
昨日まで相倉にとって若宮みたいなのは毛ほどの興味もなかっただろうに。

「いや、食うから、食うからその、押し付けるのをやめろ……ッ！！」

若宮の悲鳴に、どっちをだろうと一瞬思ったがこいつ顔赤らめてるので、有罪確定ではある。
勇気を出したのか相手の両肩を持って引きはがし、箸にぶっ刺さっている卵焼きを手に取り、
そのまま口の中へ放った。

間。


（……さて。お手並み拝見みたいなところあるな、これ）
俺は静かに思う。

若宮は、数回咀嚼して、味わうようにゆっくり嚥下した後、気づいたように相倉を見て。

「……美味い」
「――感想薄っ！！」

0点。流石だ。
相倉の文句に、少しだけ眉根を寄せて頬を搔き。

「あー、いや、味は昨日と変わんねえからさ。
　昨日もおんなじくらい美味かったし、まあやっぱ本当に美味ぇもんって、
　美味い以外の感想出てこねーよ」
「そこを捻りだして！
　なんか変に語彙力あるじゃんワカ！」
「いや、無理だって、なんか別のモンに例えるとか無理だし、
　そんなに舌肥えてるわけでもねーから、なんか上手く言えねーよ……」

-20点。……そこをなんとか言ってやれよ。
若宮はそのまま流れるように。

「――ただ、この手料理食って大人になる子供がいるんなら、そいつは幸せだし、
　毎朝これくらい美味い弁当食える男がいたら、
　きっとそいつ、どんなきつい仕事に朝送り出されても
　頑張って帰ってくんじゃねーかな」
「………っ」

120って……いやお前。
若宮お前。０か１かしかないのか？

………。
相倉は、なぜか急にしおらしくなり、そ、そう。とどこか納得いかないような、
どこか満足げな表情で隣の席に座り、卵焼き以外の残りの弁当を食べ始めた。

若宮が、不気味にそれを眺めながら問うてくる。

「……なんか間違ってたか」

ノーコメント。


☆　　　★　　　☆　　　★　　　☆


翌日。

昼に学校で購買の代り映えのしないパンを目の前の奴が食ってるときに、
ああ、どんなご馳走よりも羨ましい……と感じる日がある。

……俺が財布を家に忘れてきた日だ。

「違うんだ、若宮。
　昨日隣のクラスの女子たちとクレープ食べに行ったときにケツに入れたまま帰って、
　そのまま家に帰ったときに机の上に置いてきたんだよ」
「何も違わねーじゃねーか」

お前は言うのかよ。
まあ自分で言うと何の慰めにもならないが、
若宮はともかく俺が忘れるのは珍しいことだ。

「若宮、そのパン中身だけでいいからくれ」
「カレーパンは中身が主役なんだよ」
「中身と外のカリカリの部分だけよこせよ」
「逆になんで俺の手元に白くてふわふわしたパンを残そうと思った？
　やんねーよ。俺が忘れたときくれた試しねーじゃねーか」

言いながら嫌そうな顔でカレーパンの包みを開ける若宮。
お前モテなくて優しくないとか何のために生まれてきた人間なんだ……？

無慈悲に若宮がパンの一口目を齧ろうとしたところで、
不意にその眼前に何かが姿を現す。
食べようと思ったパンから顔を上げて、若宮がその相手を見る。

相倉。
まあ、そうだろうな。

結構これも珍しいことに男女三人の組み合わせで自分が蚊帳の外という状況が面白く、
俺は一人傍観者として頬杖をついてニヤニヤとその様子を眺める。

「………」
「……いや、なんか言えよ相倉」
「いや、分かるくね？　空気で読めない？
　……お弁当作ってきたんだけど」

へー。
へーへーへー。
これは面白い。
こういう展開もあるのか。
俺は完全に面白がって様子を見る。
最高の寸劇に口出すような無粋でもなければ、馬に蹴られるのもごめんだから。
若宮が怪訝そうな顔で尋ねる。

「……なんで？」
「……美味しいんでしょ？」
「いや、まあそうだけど。
　もう相倉が料理下手とか思ってねーって」

笑いながら宥めるように言う。
そういうこっちゃないと思うんだけどな。
でもまあ、面白いものを見れた俺にしても、財布を忘れた俺にしても、
助かるっちゃ助かる状況ではある。
どうやら俺の空腹の隙間にはカレーパンが入りそうだ。

若宮は何も言わなくなった相倉に、あー……、と長い声を出してから。

「あー、まあ、ありがとな。
　優しいんだな、相倉って」
「……っ」

「――でも今日パンあるから、マジで大丈夫だから。
　また忘れたとき、頼むわ！　一昨日はすげー助かった！」


片手で謝罪のポーズなんか作って。
苦笑みたいな顔をして。

若宮は言いやがった。






マジか。
マジかこいつ……！？


顎が外れたように口を開く相倉。
俺も全く同じ表情をしていたと思う。

やがて、弁当を持っていた手が徐々に下がっていき。

俺は、淡い何かが冷め、完全に覚める音を聞いた。

厳かに、その弁当がこっちに向けられる。

「……エイトん。食べて。財布忘れたんでしょ」
「……謹んで、いただきます」
「おお、そうだよ、ナイスタイミングじゃん相倉！
　良かったなニノ、相倉の弁当マジで美味いんだぜ。
　お前も食ってみろよ！」

いや、大喜びしているお前。
弁当よりなにより大事なものを失った気がするんだが。

まあ本人がいいならそれでいいし。
俺には何の得もないので、指摘することもやめておいた。

ちなみに、相倉の弁当はマジで美味かった。

特に何もしませんでした。

武術LV を 7 DOWN。（LV42⇒35、+7CP、-7FP）

制約LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
響鳴LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
百薬LV を 22 UP！（LV0⇒22、-22CP）
防具LV を 25 UP！（LV57⇒82、-25CP）

五十嵐(1237) とカードを交換しました！

森！ （フォレストオファリング）


フィアスファング を研究しました！（深度0⇒1）
フィアスファング を研究しました！（深度1⇒2）
フィアスファング を研究しました！（深度2⇒3）

ヒールポーション を習得！
肉体変調耐性 を習得！
パラライズ を習得！
トランス を習得！
ファーマシー を習得！
パワフルポーション を習得！
インスタントポーション を習得！
エネルジコ を習得！
薬師 を習得！
医食同源 を習得！
ローレジスタンス を習得！
パーガティブ を習得！
インフェクシャスキュア を習得！
ドラスティックレメディ を習得！
ディビジョン を習得！
アディクティブチューン を習得！
☆ソードブレイカー を習得！
☆フォークス を習得！
☆カオス を習得！
☆ベスチャルファング を習得！
☆スーパーパフォーマンス を習得！
☆スクリーム を習得！
☆初習得ボーナス：各FPが12増加した！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

マナカ(507) は 人形 を入手！
マナカ(507) は 毛皮 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『リュウジン区 C-17：チェックポイント《道の駅》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - マナカ(507) の選択は リュウジン区 C-17：チェックポイント《道の駅》

MISSION!!
オオキタ区 N-9：チェックポイント《源泉》 を選択！
　　 - マナカ(507) の選択は オオキタ区 N-9：チェックポイント《源泉》

［860 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［443 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［193 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［400 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［320 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［225 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［161 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［91 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［144 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［129 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［221 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［28 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［92 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［58 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［64 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［51 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［23 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［14 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　





　




久しぶりにチャット画面に映るふたり。

　





引きつったような表情。

　







　





　





　

　

　

　




　

　

　

不自然にチャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！