［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

珍しいものを見た、と思った。



残暑の気配も遠くに過ぎ去った頃、相良伊橋高校の図書室。
換気のためか開かれた窓からは金木犀の香りとともに風が柔らかく吹き込んでいる。


日差しが照らす窓際の長机、その一角に陣取っているのは見慣れたセンパイで、参考書やらノートやらと真面目に向き合っているのは見慣れない姿だった。
珍しいと言いつつ、そもそも私自体あまり図書室を利用することはないので、もしかしたらいつもこうして勉強していたのかもしれないけど。


「今日は起きてるんですね」


とにかくそれが物珍しくて、私はセンパイの右後ろ──視界の外側からそっと忍び寄り、声をかけた。
そういえば、私から声をかけるのはなんだか久しぶりな気がする。


「う……──」

うわ、と発せられるはずだったと思われる言葉は、そのまま飲み込まれる。
それでも静かな図書室の中ではよく響いてしまい、何人かの生徒が迷惑そうにこちらに視線を向けていった。

「ダメじゃないですか、静かにしないと」

「……誰のせいだと思う？」

「センパイでしょう？」
「で、何してるんですか？」

反論が来る前に言葉を続けると、机の横を回ってセンパイの斜め向かいに腰を下ろす。

センパイは何やら物言いたげにじとーっとこちらを見ていたが、やがて諦めたのか、見りゃわかるだろ、と手元に広げた参考書を指先でとんとんと叩いた。

「枕にするには薄いんじゃないですか？」

「だから寝に来たんじゃねえっつの……！」

さすがに今度は抑えに抑えた抗議の声が上がる。

「そうですね、寝てる余裕なんてありませんよね。
なんてったって医大の受験生ですもんねぇ」

「分かってるなら集中させてくれ……」

ぶつぶつとそう言って、センパイは手元に目を落として勉強を再開する。



初めて医大を目指すと聞いた時は、一体何の冗談だろうと思った。
この人はそんな冗談を言うタイプではないのはもちろん分かっていたけど。


だって、医大って医大ですよ？


以前気になって軽く調べてみたら、学校によっては倍率50倍を越えることもあるのだとか。
笑ってしまうくらい狭い門に、どうやらこの人は本気で挑もうとしているらしかった。



「……ねぇセンパイ」
「どんなに頑張っても、夢が絶対叶わないとしたらどうします？」

これは、今まさに夢に向かって努力を重ねている人に対して聞くべきことではないことだ。
分かっている。
分かっていても、口をついてしまった言葉はもう取り消すことはできない。

様子を伺うと、センパイは難しい顔をして、

「……絶対って、絶対か？」

そう聞いてきた。

「……絶対です」
「どんなに努力を重ねて、積み上げて、抜け道すら探しても届かない」
「そういう仮定です」

センパイは引き続き難しい顔をしたまま、うーんと唸って腕を組んで考え込んでしまう。

「まあ、実際にそうなってみねえと分かんねーけど……」

私のこんな質問に真面目に考えて答えようとしてしまうのは、センパイの悪いところだと思う。


「……分かんねえけど」
「少なくとも、諦めるってことはしないんじゃねえかな」


「…………どうして？　無駄になっちゃうんですよ？」

「そうか？　無駄にはなんねえだろ」

「叶わないことと、やったことが無駄になんのは違うだろ」
「それにホラ、そのものは無理でも、諦めなきゃ近いところには手が届くかもだしな」

「…………」

羨ましい。

夢を叶うものと信じられる人が、それに向かって努力できることが、心底羨ましかった。
多くの人が夢とすら思わずに掴めるものすら、私には望めないのに。

こんな風に思ってしまうのは筋違いだと分かっている。
どうやっても叶わない夢などに未練を持つのは間違ってる。
孵らないと分かっている卵をいつまでも抱くのは滑稽だ。


何もかも分かっていながら、私はあの夏の日から立ち止まったままだった。


そうして私が立ち止まっている間に、周りの人たちは皆自分の進むべき道を選んで歩きだしていく。
どこにも行けない私を置いていくんだ。





「……で、結局なんだったんだこの質問」

「別に？
ちょっと進路で悩んでただけですよ」

柔らかな秋の日差しは、少しくらいは私の表情を明るいものに見せてくれていただろうか。

特に何もしませんでした。

守護者の姿が消え去った――

　

　

六角形の柱から天に向け、赤色の光柱が立つ。

どうやら次元タクシーで行けるようになったようだ。

時空LV を 3 DOWN。（LV25⇒22、+3CP、-3FP）

具現LV を 3 UP！（LV27⇒30、-3CP）
領域LV を 5 UP！（LV25⇒30、-5CP）
合成LV を 5 UP！（LV3⇒8、-5CP）

ウーリ(888) とカードを交換しました！

追いオリーブオイル （バーニングカード）


クリエイト：ワンダーランド を研究しました！（深度0⇒1）
クリエイト：ワンダーランド を研究しました！（深度1⇒2）
クリエイト：ワンダーランド を研究しました！（深度2⇒3）

サモン：ソルジャー を習得！
アジール を習得！
クリエイト：ワンダーランド を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

線引(506) は どろどろ+1 を入手！
線引(506) は 不思議な布 を入手！
線引(506) は すごいお肉 を入手！
マナカ(507) は すごいお肉 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - マナカ(507) の選択は カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》

MISSION!!
ウシ区 E-19：チェックポイント《黒い水》 を選択！
　　 - マナカ(507) の選択は ウシ区 E-19：チェックポイント《黒い水》

［870 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［443 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［190 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［380 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［296 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［204 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［143 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［61 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［123 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［108 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［129 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［12 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［37 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　





　




チャット画面に映るふたりの姿。

　





　





　

　

　

　

　

　





　

　

　

　

　

　





　





　





　





清々しい笑顔を見せるふたり。

　

　

　






　








　

　

　

ふたりの愚痴が延々と続き、チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！