
状況!
異世界に飛ばされたかと思ったら自分の中に売春してる少女の人格と記憶が流れ込んできた!
「めげませんよねえ」
「いや正直めげてますけど?」
他人事のような顔で言う同行者――テルプシコラに恨めしげな視線を送ったが奴はどこ吹く風だ。
実際他人事でしかないのだろう。というか、真実他人事だ。俺だって他の人間が同じ目に遭ってたら当事者ッツラできない。なにせあんまりにもあんまりすぎて自分のこととして考えることが完全に不可能なので。
でも自分に起きたことである以上どうしても自分のこととして考えなければならないんですね~。マジで?
そもそも自分でも本当にわかんないからなコレ。どういうこと?
とにかく現実として受け止めなければならないのは、自分ではない自分としてイバラシティとやらで生活を送る自分は年頃の少女であるということ。
その少女は夜逃げした親に背負わされた借金返済のために売春を強制されていたこと。
借金こそ完済したということになっているが身寄りがなく、希望の学校に進学するために今も似たような行為を続けていること。
その少女の体験と経験が全部この俺――フレデリック・ナイトレイのものとして頭に流れ込んでいること。
それなりに面倒事に巻き込まれたり巻き込まれなかったりしつつもなんとか生きてきた人生だったがこんなこともあるらしい、というのを日々噛み締めるばかりである。
こんなことある? あるんだよな~。今あってるからな。あってたまるか。助けて。
「あちらの貴方の造作の話でありますが」
「いきなり何」
「世間一般的な感覚に照らし合わせて言及致しますと、随分と可憐ですので」
「いきなり何!?」
「あくまでもこちらの貴方と比較しての事実ゆえ、褒めているわけではありませんが」
「褒められてるとも思ってねえよ!」
真顔で首を傾げるな。よく分からない誤魔化しの人間しぐさばっかりインストールするな。インストールって何?
この異世界転生、知らないはずの概念がバシガシ脳に刻まれてるのも結構怖いんだよな。まさか俺いつか元の世界に戻れてもこのままなの? できれば全部忘れたいんだけど。何もかも。
まあそもそも元の世界に帰るための手段が全く見つからないんだが。
「僅かばかりどこか貴方と近しい空気感を持っているように見受けられるのがまた不可思議な話で」
「えっ!? あれと俺が!? 髪の色とかそれ以外のところで!?」
「似ていない兄妹よりは似ているものと認識していますが」
「やめろやめろそういうのほんとやめろ!!!」
「事実ですが」
ほんとうにやめてほしい。
いや、普通に考えたことなかったな。髪の色が同じくらいは認識してたんだよ。それ以上深く考えたくなくて。これからも考えないことにしたい。
したいので。
「……事実でもそういうこと言うの二度とやめてくれる?」
「認めますか?」
「認めたくない……」
認めたくないし、認めさせようとしないでほしい。
向き合ってもどうにもならない現実から目を逸らす権利くらいは認めてほしい。
「今度から同行者を増やすという話でしたが」
「え? うん」
「貴方のイバラシティでの姿や所業は明かすのですか?」
「なんで?」
なんで?
「情報は共有されるものかと」
「してどうする情報だよそれ」
「私から告げましょうか?」
「告げてどうする情報だよそれ!?」

[871 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[441 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[500 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[177 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[377 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[286 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[199 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[137 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
[56 / 500] ―― 《堤防》顕著な変化
[122 / 400] ―― 《駅舎》追尾撃破
[5 / 5] ―― 《美術館》異能増幅
[92 / 1000] ―― 《沼沢》いいものみっけ
[90 / 100] ―― 《道の駅》新商品入荷
[83 / 400] ―― 《果物屋》敢闘
[0 / 400] ―― 《黒い水》影響力奪取
[8 / 400] ―― 《源泉》鋭い眼光
―― Cross+Roseに映し出される。
ザザッ――
ノウレット
ショートの金髪に橙色の瞳の少女。
ボクシンググローブを付け、カンガルー風の仮装をしている。やたらと動き、やたらと騒ぐ。
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ノウレット 「ごきげんよう皆さん。案内人さんには悪いですが、場所を借りますよ。」 |
チャットにノウレットが現れる。
・・・が、どうも雰囲気が異なっている。
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ノウレット 「何やら妙な輩が妙なことを言っておりましたが、全て戯言でございます。 ゲームへの支障はありませんのでご安心ください。」 |
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ノウレット 「混乱を招くような者は、こちらで対処させていただきます。」 |
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ノウレット 「そして・・・・・共に条件を満たしましたので、以前お伝えしました2件・・・18:00より開始いたします。」 |
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ノウレット 「ひとつ。影響力が低い状態が続きますと皆さんの形状に徐々に変化が現れます。」 |
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ノウレット 「最初に皆さんが戦った相手、ナレハテ。 多くは最終的にはあのように、または別の形に変化する者もいるでしょう。」 |
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ノウレット 「ふたつ。決闘を避ける手段が一斉に失われます。 ベースキャンプにいる場合でも避けられませんので、ご注意ください。」 |
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ノウレット 「・・・それでは引き続き、ゲームをお楽しみください。」 |
チャットが閉じられる――