
「着きましたっス」
「案内ご苦労様。はぁ、なかなか立派な屋敷だな。」
2人は煙草色の屋根が印象的な屋敷の門前に辿り着いた。
ここがポールモール邸。ニコレットが仕える屋敷であり、今回の事件の舞台だ。
今は敷地の中から外から、大勢の警官が捜査をしている最中のようだ。
探偵は誰かを探すように、キョロキョロと辺りを見廻した。
「ん?今日は居ないのかな…」
目を眇めている探偵の元に、上等の背広を着た神経質そうな男が、硬い足音を響かせながら歩み寄ってきた。
「自殺の現場なのでね!今日は
ジッポーはいませんよ、チャコールさん!」
忌々しさを微塵も隠す気のないその声に、ニコレットは驚いて身を竦めるが、探偵は素知らぬ様子で、くるりとそちらを見やる。
「ああ、これはこれは
ストライクス警部、今日もお元気そうで。」
ストライクス警部と呼ばれた男は、眼鏡越しに鋭い目で探偵を睨みつけている。探偵よりも小柄で、痩身であるはずのその姿は、刺々しいほどの威圧感を発していた。
「チャコールさん、何故あなたが自殺の現場に来ているんですかね?ここには何の事件性もありゃしませんよ!自殺の現場なのでね!!!まったく、ジッポーに煽てられたからと付け上がらないで欲しいものですな!邪魔なのでお帰りいただきたい!」
火がついたように捲し立てるストライクス警部を、探偵は鼻で笑った。
「自殺?相変わらずおめでたいですなぁ。こんな幼い子供だって、この事件は第三者による殺人であると見抜いたっていうのに。いやはや、警視庁も堕ちたもんだ。」
「何?子供…?」
ストライクス警部は眼鏡を上げると、探偵の影に隠れていたニコレットに顔を寄せ、その姿を凝視した。
「ひっ」
さながら蛇のような目で睨まれたニコレットは竦みあがり、居心地悪そうに怯えていた。
探偵はニコレットの前にサッと掌を出し、ストライクス警部の蛇睨みを遮った。
「おいおい、やめてくれないか警部殿。俺の大切な依頼人だ、丁重に扱ってくれ。」
「依頼人!?」
ストライクス警部は驚きのあまり上ずった声を出し、探偵の手を払い除けてニコレットの顔を見た。
「…お嬢さんがこの探偵に依頼をしたのかね?ハッ、これは笑いものですな。お嬢さん、推理小説の読み過ぎではないのかね?些か現実が見えていないようだ。これは心中だ、それ以上の何事でもない。探偵の出る幕ではないのだよ、せっかく依頼したのに残念だったな」
小馬鹿にするような態度のストライクス警部に、ニコレットは全力で反論した。
「心中なんて嘘っス!旦那様を侮辱するのはやめてください!!!旦那様はいつもアッシたち使用人のことを気にかけてくれていたっス!あの優しい旦那様が、使用人と心中なんてするわけない!!チャコール先生はアッシと旦那様を信じてくれたっス!!あなたみたいな不誠実な警部さんよりも、チャコール先生の方がずっと信頼できるッス!!!!!!」
「なっ…何を…」
ニコレットの必死の主張に気圧されたのか、ストライクスはたじろいだ。
「…ま、そういうことだ警部殿。満足いくまで調べて、何も無かったら帰るからさ。とりあえず調べるだけ調べさせてくれよ。なんなら警視庁に連絡して引っ張り出してきてもいいんだぜ?ジッポー警部を。あの人なら二つ返事で調査の許可を出してくれるだろうね。いいのかい?
手柄、取られるぞ?」
その言葉を聞くと、ストライクスは目を見開き、ヒクヒクと痩せた頬を引きつらせ、燃え盛るような怒りを堪えながら、かろうじて冷静を取り繕った声を絞り出した。
「……い、良いでしょう、そこまで言うならさっさと満足して帰って頂こう。まあ、調べても何も出てこないでしょうがね!」
「そうこなくちゃな」
探偵は不適に笑うと、紙箱から振り出したタバコを咥えた。

[860 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[431 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[492 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[171 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[369 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[274 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[193 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[134 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
[47 / 500] ―― 《堤防》顕著な変化
[116 / 400] ―― 《駅舎》追尾撃破
[5 / 5] ―― 《美術館》異能増幅
[1 / 1000] ―― 《沼沢》いいものみっけ
[24 / 100] ―― 《道の駅》新商品入荷
[72 / 400] ―― 《果物屋》敢闘
―― Cross+Roseに映し出される。
ザザッ――
暗い部屋のなか、不気味な仮面が浮かび出る。
マッドスマイル
乱れた長い黒緑色の髪。
両手に紅いナイフを持ち、
猟奇的な笑顔の仮面をつけている。
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マッドスマイル 「――世界の境界を破り歩いてはその世界の胎児1人を自らの分身と化し、 世界をマーキングしてゆく造られしもの、アダムス。」 |
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マッドスマイル 「アダムスのワールドスワップが発動すると分身のうち1人に能力の一部が与えられる。 同時にその世界がスワップ元として選ばれる。スワップ先はランダム――」 |
女性の声で、何かが語られる。
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マッドスマイル 「・・・・・妨害できないようね、分身。」 |
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マッドスマイル 「私のような欠陥品でも、君の役に立てるようだ。アダムス。」 |
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マッドスマイル 「・・・此処にいるんでしょ、迎えに行く。 私の力は覚えてる?だから安心してね、命の源晶も十分集めてある。」 |
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マッドスマイル 「これが聞こえていたらいいけれど・・・・・可能性は低そうね。」 |
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マッドスマイル 「絶対に、見つけてみせる。」 |
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マッドスマイル 「そして聞こえているだろう、貴方たちへ。 わけのわからないことを聞かせてごめんなさい。」 |
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マッドスマイル 「私はロストだけど、私という性質から、他のロストより多くの行動を選ぶことができる。」 |
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マッドスマイル 「私の願いは、アダムスの発見と・・・・・破壊。 願いが叶ったら、ワールドスワップが無かったことになる・・・はず。」 |
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マッドスマイル 「・・・これってほとんどイバラシティへの加勢よね。 勝負ならズルいけど、あいにく私には関係ないから。」 |
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マッドスマイル 「アダムスは深緑色の髪で、赤い瞳の小さな女の子。 赤い服が好きだけど、今はどうかな・・・・・名前を呼べばきっと反応するわ。」 |
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マッドスマイル 「それじゃ・・・・・よろしく。」 |
チャットが閉じられる――