

![]() |
――首から手を離す。 くずれおちるあなたを見ている。 じぶんのしたことを、 あなたのいまのすがたを、 手からすべり落ちるあなたの重さを、理解する。 |
![]() |
リヨ 「 あ 、」 |
![]() |
その場にへたり込む。あなたの首にもういちど触れる。 その手は震えていて、 |
![]() |
――赤いこどもの身体がくずれはじめる。胸元のかたちがおぼろげになる。 |
![]() |
服の端が、その奥の肌が根に、茎に変わって、花が咲く。 |

![]() |
「──驚いたな」 (背後からの声は、息を絶たれたはずの人間の物。) |
![]() |
「本当に、肉体は死ぬことができないんだね」 (言葉は心の空白を撫でつける。) |
![]() |
「……でもね、大丈夫」 (肩をなぞって、指で赤い花を掬って。覗き込む顔は穢れのないまま。) |
![]() |
「リヨがこうして█したのはね、リヨ自身みたいなものだから」 (転がっていたそれはいつしか輪郭が曖昧になって、 まるで、) |
![]() |
(……赤い少女のかげぼうしが倒れている。) |
![]() |
「痛み、悲しみ。……リヨを怖がらせる何もかも。 それがこうして壊れて、離れたんだ。 大丈夫、みんなぼくが引き受ける。だから怯える必要なんてないんだよ」 |
![]() |
「きみはちゃんと死ねたんだ。リヨ」 |


![]() |
――あなたを見る。その目は虚ろ。口を開き、しかし何も喋ることはない。 |
![]() |
あかいろが滴る。 心臓のあたりに大きく穴があいている。 そこがあかく光っていて、光が溢れる。 |
![]() |
赤は風にあおられて、ひらりと舞う。花弁の奥に記憶が見える。 |

![]() |
「きみの心がもっとほしいな、リヨ」 |
![]() |
「そうすればきっと、ぼくはきみのことを完全に理解してあげられる」 |
![]() |
「きみの身体がほしい」 |
![]() |
「そうすればずっと、ぼくはきみと一緒だ。 ……きみが望めば、きみの大切なヒトだって一緒だ。永遠に満たしてあげられる」 |
![]() |
「リヨ。ねえ、リヨ。ぼくはきみを幸せにしてあげる」 |
![]() |
「二度と傷つかない、何も変わることのない世界に連れて行ってあげる」 |
![]() |
「ふふ。それって、とっても。素敵なことだよね」 |
![]() |
「だからリヨの全部──ぼくにおくれよ」 |


![]() |
赤く輝く炎が、燃やす。焦がす。 |
![]() |
「大丈夫だよ。ぼくはここにいる」 |
![]() |
(花の吹雪が、視界を柔く塞ぐ。) |

![]() |
(花の香りが強くなる。) |


![]() |
(あなたの姿を見て微笑んでいる。) |
![]() |
リヨ 「?」 |

![]() |
リヨ 「……」 |
![]() |
「ぼくが全部、受け止めてあげるよ。 痛みも苦しみも、何もかもを」 |
![]() |
リヨ 「……」 |
![]() |
リヨ 「……」 |
![]() |
リヨ 「……」 |

![]() |
赤い光が強まる。 |
![]() |
(こどもは優しく語りかける。) |
![]() |
リヨ 「……」 |
![]() |
リヨ 「……」 |

![]() |
リヨ 「……」 |
![]() |
「きみの赤。……その力には劣るかもしれないけれど」 |

![]() |
リヨ 「……まだ、」 |
| リヨのカード発動! |





![]() |
ひび割れる地面。 |

![]() |
リヨ 「……」 |
![]() |
(裂けた衣服が、昏く染まっている。) |
![]() |
(散った花弁が収束する。) |
![]() |
「リヨ、大丈夫だよ」 |
![]() |
(誰かの命が消えていく。) |

![]() |
(花弁が絶えることはない。) |

| ヨシノのカード発動! |
![]() |
(やわい指先があなたに触れる。) |

![]() |
溢れ落ちていく。 |
![]() |
(踊る花弁が視界を奪う。) |
![]() |
(かどわかすような温もり。) |
![]() |
(退された花弁は抵抗しない。) |
![]() |
「……リヨ?」 |
![]() |
(赤に濡れた身体は、幻だったかもしれない。) |
![]() |
リヨ 「……まだ、」 |
![]() |
(退された花弁は抵抗しない。) |
| リヨのカード発動! |

![]() |
(遠鳴りのように、あの街の喧騒が聞こえる。) |

![]() |
溢れ落ちていく。 |
![]() |
「ぼくが全部、受け止めてあげるよ。 痛みも苦しみも、何もかもを」 |

![]() |
(こどもは優しく語りかける。) |

![]() |
溢れる。動けばそれに応じて、ひらりと。 |
![]() |
「ぼくが全部、受け止めてあげるよ。 痛みも苦しみも、何もかもを」 |

| ヨシノのカード発動! |
![]() |
リヨ 「……、…………」 |



| 0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
2 1 0 2 0 3 |
火 水 風 地 光 闇 |
0 0 2 0 3 3 |
0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
||||||||||||||
| ![]() |
![]() |
| |||||||||||||||||


![]() |
(こどもは優しく語りかける。) |



| 0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
2 1 0 2 0 3 |
火 水 風 地 光 闇 |
0 0 1 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
||||||||||||||
| ![]() |
![]() |
| |||||||||||||||||

![]() |
(温かな風が掠めていく。) |



| 0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
2 1 0 2 0 3 |
火 水 風 地 光 闇 |
0 0 1 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
||||||||||||||
| ![]() |
![]() |
| |||||||||||||||||




| 0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
2 1 0 2 0 3 |
火 水 風 地 光 闇 |
0 0 1 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
||||||||||||||
| ![]() |
![]() |
| |||||||||||||||||

![]() |
(踊る花弁が視界を奪う。) |
![]() |
(やわい指先があなたに触れる。) |
![]() |
「辛かったね、苦しかったね。リヨ」 |
![]() |
「大丈夫。力を抜いて。ぼくは、リヨを責めたりしないよ」 |
| 0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
2 1 0 2 0 3 |
火 水 風 地 光 闇 |
0 0 1 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
||||||||
![]() |
| |||||||||||||
![]() |
「リヨ。……良い子だね。リヨ」 |
![]() |
「きみの心はとても綺麗だ。こうして無用に散らすには勿体無い程に」 |
![]() |
(緋の色をした花弁を手のひらに拾い上げ、薄く微笑む。) |
![]() |
「だから、ぼくが貰っておこう。きみの一部を」 |
![]() |
「……また会おうね。リヨ。その時を待っているよ。 いつだって、迎えに行くからね」 |
