天におられるわたしたちの父よ
み名が聖とされますように
み国が来ますように
みこころが天に行われるとおり
地にも行われますように
わたしたちの日ごとの糧を
今日もお与えください
わたしたちの罪をおゆるしください
わたしたちも人をゆるします
わたしたちを誘惑におちいらせず
悪からお救いください
Amen.
5/18追記
・冊子から別件で参考人となった水原九郎の左手小指以外の9本分の指紋を採取。
・いずれも現場に残されていた植井登志郎の指紋とは一致せず。
5/27追記
・戸籍には特筆事項なし。
・小中学校の学籍記録は現存せず。但し同様のケースは複数例報告されている。
・スマートフォンの通信記録より,使用開始時期は事件発生時期と一致。
・同時期,ツクナミ区内で2件の目撃情報あり。内1件は黒髪だったとの情報あり。
・付近コンビニエンスストアは廃業しており,監視カメラ映像の取得は不可能。
・周辺住民,聖堂への来訪者への聞き込みから,水原九郎と思われる男性神父が本格的に活動しているのは約1年前,事件発生時期の数ヶ月後からと推定。
6/15追記
・マシカスタジアムにて撮影された画像の中に水原九郎と思われる人物を確認。
・画像解析の結果,植井登志郎と99%一致することが判明した。
6/27追記
・水原九郎にスマートフォンを提供した人物,白妙凛音と接触。
・立場や状況から多くを知っているはずだが,言動や態度に不審な点は無い。
・殺人犯を匿っているという認識を持っていないのか,それとも私が間違っているのか。
6/29追記
・逮捕当時に作成した植井登志郎の調書から,妄言と思われていた部分を再検討。
・4人は本来居ないはずの人間。正体は怪物。殺さなければ自分が殺される。
・聴取によって得られた動機は以上の一点のみ。被害者4人の経歴に不審な点は無かった。
・証言内容はアンジニティ関連の事件に近いが,事件はアンジニティ関連の事件より先に発生しており,模倣犯にしては時期が合わない。
・植井登志郎は日常的に飲酒しており,アルコールが原因のせん妄とも考えにくい。
・周囲の証言を洗っても,争いの原因と思われるような会話などの目撃証言はない。
私の罪は許されないと知っています
「…今回のは、予想としては全然大したコトやってないよ。
それに、ここまで単純な手が通用するヤツらは「あっち側」では多くないと思うからね。気抜いちゃダメ」
リンカはいつもそうだ。気を抜いたところなんで見たことが無い。
「へいへい,そう簡単じゃねーってハナシな。
そんで,お前としちゃ,こっからどー挽回するつもりだぁね?」
「この辺でやるべきことやったら、もっと多いトコに突っ込んでくのも考えてる。
それとは別に、ハザマでのやりくりとか立ち回りに困ってそーな人達の手助けとかも、余裕がある範囲でやるつもり」
「いちおー今も、立ち回りの話をするためのチャットルームくらいは作ってんだけどね」
自分などよりもずっと広くを見て,考えている。
むしろ,自分が…あまりにも,考えることをやめてしまっているのだろうか。
「…尊敬すっけど,過労死すんなよ?
こっちが負けたら確かに最悪だけどよ,こっちが勝ったってお前が死んでたらしゃーねーんだからさ。」
「………「あんな風」になるくらいなら、過労死の方がマシでしょ」
小さく呟くように,語られたその言葉は,重かった。
簡単なことだ…リンカにとってこの戦いは,負ければ全てを失う戦いなのだ。
いや,イバラシティの多くの人にとって,この戦いは決して負けられない戦いなのだろう。
「…なるほどな,そうかも知れねぇ。」
それでは,自分はどうか。
このハザマに飛ばされて,アンジニティの侵略という間抜けな馬鹿話が本当だと知った。
あの時殺した4人が,間違いなくアンジニティの怪物であったと知った。
それは自分にとって……救いですらあったのだ。
自分の行動は決して間違っていないと,そう強く感じることができた。
けれどその一方で,あの4人も…本当ならイバラシティで生きていきたかったのだろうと,そう思う。
もしかしたら,アンジニティの連中は皆,そうなのかも知れない。
負けたら全てを失う。
けれど,勝ったところで罪が消えることはない。
私の罪は許されないと知っています
では,彼らに罪はあるのだろうか。
わたしたちの罪をおゆるしください
わたしたちの罪をおゆるしください
ゆるす
許す
赦す
ゆるす,って何だ?
「………なぁ,俺ってさ……馬鹿やってっかな。
だってそうだろ?名前まで変えて,逃げ回って,好き勝手やってさ。
ぶっ殺した奴らのコトなんざ,何も知らねぇみたいな顔して生きてんだぜ?」
「…クロウは、赦しが欲しいんすか?それとも、幸せになっちゃいけないって、罰して欲しいんすか?」
「…それがさ,分かんねぇんだ。
そらぁ,赦されんなら赦されてぇよ…だけど,赦されるワケねぇんだから,どうしようもねぇ。
幸せんなりてぇよ…今だって,あの聖堂で暮らすのも,環と一緒に居んのも,すげぇ幸せだ。
………だけどさ,だけどよ………。」
「彼女はなんて言ってるんす?赦してはくれないっすか?
教祖様はなんて言ってるんす?赦さなかったらそこに置いてはくれないんじゃないっすか?
どうやったって殺された側からは赦されないのならせめて…
…好いてくれる人から赦してもらえるなら、いいと、思うんすけどね……」
「……俺さ,ちっと馬鹿やっちってさ。
そこで襲われてた奴死なせられねーから,ケーサツ呼んだんだわ。」
「…え?……ケーサツを、呼んだ?
…通報したんですか?」
「………すげー血ぃ流れててさ,そうするしか無かった。
そんで……まぁ,色々あってよ………ごめんな,多分,大丈夫だとは思うんだけども……。」
「……謝らなくても大丈夫ですよ。
だって、誰かを助ける為に、するべきことをしたんですよね?何も、悪いことはありませんよ。」
「……その行動は、すごく大事なことです。
その行動こそ、九郎が…怪物なんかじゃないっていう証明です。
この手は、誰かに差し伸べることが出来た手なんです。
それに、ほら…これもきっと、『成るように成る』ですよ。」
「悪ぃ,今思えば何もしねぇで逃げっちまった方が良かったんだけども…。」
「いえいえ、貴方は正しい行いをしたと思いますよ。
むしろほうっておいたら叱ってました。」
「……ったく,そう言われっちまったら何も言えねぇや……。」
「私に話しをしに来たと言うのはきっと、何かしら困った事があったからでしょうし、そういう話を聞けば、手を化したくなると言うのが人情というモノです。
…なによりほら、今は親戚ですし、ね?」
「しっかし……ほんっとに,お前は会った頃からお人好しっつーかなんつーか……
…ありがとな,ホントに。」
「私は、後悔しておりませんよ。」
「……これも単なる独り言だけれど、出来れば覚えておいてほしいんですれどね。
人は自分の価値を、基本的に良くはみれません。
自分の心や姿をみるっていうのは、他人を見るより難しいものだから。
それに、程良い自己愛を持つ事って言うのは、きっと難しい事なんでしょう。
でも、そういうときは……誰かの言葉を借りればいいんですよ。〝そんな事はない〟って」
「ほーれ,“そんな事ねぇ”って言うと思った。」
……っつーか,違ぇか…悪ぃ……正直,言ってくれるって思ってたわ。」
「…………ありがとな,凜音。」
「ちゃんと楽しんでくださいね、今の生活を。じゃないと、許しませんから」
「へいへい…お前が許さねぇとか言うと,マジで色々恐ぇかんなぁ。」
「――さてさて、そろそろ仕事にもどりますよ。」
「残りの仕事もがんばってくださいね、クロウ神父?」
「分ーった分ーった。ほんと,助祭様は人遣いが荒いんだからよー。」
「…もっと早く話しゃ良かった。」
「心配してくれて…そして話をしてくれて、ありがとうございます。
ティーナさんも手伝ってくださっているんですから、きっと大丈夫ですよ。
…それに……過ぎた事は仕方がないですから…
不安になる分は…その、こうして補填してもらえれば……」
「……そっか…そんなら……。」
「………めっちゃ落ち着く。」
「…えぇ、こうして抱きしめて貰えると、凄く落ち着くと言うか…
やっぱり、こうしてもらうの、良いですね…
………何かあったら…また、こうしてください…」
「…俺としちゃ…何もなくても,こうしてやりてぇんだけどな。」
黒浦鴉の言葉
白大甕環の言葉
水原ティーナの言葉
白妙凛音の言葉
大切な,大好きな,温かな感触
私の罪は許されないと知っています
それでも
私はここにいたい
天におられる俺らの父よ
み名を崇めさせてくれ
み国を来させてくれ
みこころが天でやったように
地にもそうしてくれ
俺たちの毎日の糧を
今日も与えてください
俺たちの罪をおゆるしください
俺たちも人をゆるします
俺たちを誘惑に遭わせず
悪からお救いください
俺たちの罪をおゆるしください
俺をここに居させてください
Amen.

[842 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[382 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[420 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[127 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[233 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[43 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[27 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
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白南海 「・・・・・おや、どうしました?まだ恐怖心が拭えねぇんすか?」 |
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エディアン 「・・・何を澄ました顔で。窓に勧誘したの、貴方ですよね。」 |
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
落ち着きなくウロウロと歩き回っている白南海。
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白南海 「・・・・・・・・・あああぁぁワカァァ!! 俺これ嫌っすよぉぉ!!最初は世界を救うカッケー役割とか思ってたっすけどッ!!」 |
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エディアン 「わかわかわかわか・・・・・何を今更なっさけない。 そんなにワカが恋しいんです?そんなに頼もしいんです?」 |
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
ゆらりと顔を上げ、微笑を浮かべる。
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白南海 「それはもう!若はとんでもねぇ器の持ち主でねぇッ!!」 |
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エディアン 「突然元気になった・・・・・」 |
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白南海 「俺が頼んだラーメンに若は、若のチャーシューメンのチャーシューを1枚分けてくれたんすよッ!!」 |
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エディアン 「・・・・・。・・・・他には?」 |
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白南海 「俺が501円のを1000円で買おうとしたとき、そっと1円足してくれたんすよ!!そっとッ!!」 |
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エディアン 「・・・・・あとは?」 |
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白南海 「俺が車道側歩いてたら、そっと車道側と代わってくれたんすよ!!そっとッ!!」 |
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エディアン 「・・・うーん。他の、あります?」 |
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白南海 「俺がアイスをシングルかダブルかで悩ん――」 |
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エディアン 「――あー、もういいです。いいでーす。」 |
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白南海 「・・・お分かりいただけましたか?若の素晴らしさ。」 |
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エディアン 「えぇぇーとってもーーー。」 |
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白南海 「いやー若の話をすると気分が良くなりますァ!」 |
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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白南海 「・・・・・・・・・あああぁぁワカァァ!!!!!!」 |
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エディアン 「・・・あーうるさい。帰りますよ?帰りますからねー。」 |
チャットが閉じられる――