［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

ファミレス。

特段語るべきこともないくらいのいつもの風景だ。
帰る時間が重なったので風凪マナカを連れてきている。
連れてきているというか、呼んだら来たというだけで、それもまあいつもの風景だ。
ちょうど季節の変わり目で、メニューが一新するころにはいつも誘うようにしている。
『パンケーキの新作あるらしいけど行くか？』と尋ねたイバラインには返答はなく、
ただ既読になっていただけだったが、
授業が終わって階段を下りていったら玄関でしっかり待っていたので、
……まあ行ってやらないこともないってことだろう。

風凪マナカは多分割とパンケーキが好きだ。
俺が行くか誘って、来なかったことがないくらいには。

ファミレスの席につき、お互いの前にお冷を置く。
同じものを頼むのも何なので、
小腹に詰め込む用にミートパスタを頼んだ。
何か言う前に店員に手際よく小皿をお願いし、
何も言わないままこちらにフォークを見せてきたので首を二回軽く振ると、
風凪は少量のパンケーキと引き換えに、少量のパスタをこちらの皿からくるくるとフォークで巻き取り、
無言のままお互いの国家による食べ物トレードが行われた。
これ、こっちからお願いすると低確率で断られるんだよな。わからん。

先にパンケーキを食べてみたが、
風凪を釣れるだけあって結構美味しかった。
ただ風凪の皿を見るとこればっかり食ってたら流石に飽きるなという大きさだったので、
少量のトレードが成立した理由もよくわかる。

パスタも一通り片づけたところで見ると、風凪を見ると、
まだパンケーキが丸々一枚残っていた。
毎度毎度、どんな食べ物を食べていても俺の方が食べ終わるのが早い。
別に男子同士で買い食いしてるときに感じたことがない速度の違いなので、
自分が早食いというよりは、風凪が食べるのが遅いのだと思う。
ただ、それもいつもの光景なので別に急かしたりはないし、
自分の方が食べるのが遅いからって風凪が急いだりすることもない。
お冷の氷を一個口に含んでかみ砕いていると、
風凪がパンケーキを一つ、フォークに挿して口に運んでいるところで。

さらりと髪が右に流れた。
右耳が少しだけ覗く。

………。
……………。
……ん？

「風凪」
「あげませんよ」
「言ってねーよ！
　いや、そうじゃなくてだな」

違和感。
普段は髪の束に隠れている右耳には、
俺が……まあ、俺が風凪に頼まれて開けたピアスの穴がある。
それについては今更何も誤魔化したりはしないけれど、
そこには穴が塞がらないためのファーストピアスなるものが挿されている。
それもいい。
ただ、今。

「風凪、右耳見せてくれるか」
「……変態ですね」
「なんでそうなる！？
　どこまで深読みしたらそういう罵倒が出てくるんだよ。
　ちげーって、その……お前、右耳」

パンケーキを飲み込み。
風凪が少しだけ首を傾げる。
そして、何かに気づいたように、にぃ、と。
――小さく笑った。

「ああ、これですか……？」

風凪が、自分の髪を指でかき上げて。
右耳を見せてくる。












そこには。
――ファーストピアスが、二つついている。

穴が。
二つ開いていた。

俺が開けた穴は一つだ。
俺があの日、学校で風凪の耳に開けた穴は一つだった。


「………」
「……もう一つ、あってもいいかなって思って。
　秘密ですよ、センパイ」
「……いいかな、ってお前。
　それ……」

何と言っていいのかわからない。
何と表現していいかわからない。

風凪はそんな俺の困惑を楽しむように、
その薄い唇を二ィ、と再び笑みの形にして。


「ええ。
　開けてもらいました」


………。

…………。


☆　　　★　　　☆　　　★　　　☆　　　


誰に？



っていう。
夢を見て、今飛び起きた。

ッ。

っっっっっ。

汗が。
やばい。
冷や汗だか、寝汗だか、わからない汗に。
びっしょりと胸元と額が濡れている。

マジで。
なんつー。
クソみたいな夢だよこれ。
滅茶苦茶な悪夢でもなければ、
散々な地獄のような夢でもない。
ただただ、ぬるま湯で足がふやけるような、
そんなじっとりとした湿度しか感じられない夢。

今まで見た悪夢の中でも、
とびっきりに生温い、耐えがたい温度の夢だった。

いや、ていうか。
もっとわかりやすい悪夢来いよ……！！

ベッドの上でゴンゴン布団を叩く。
言いようのない、何か夢の中でも感じた表現しがたい感情が襲ってきて、
じっとしていられず、叫べるものなら叫びたい感覚に襲われた。
学生寮全体に響き渡って、翌日追い出されるのは勘弁という、
ギリギリ残った理性が勝って我慢したが。

……風凪の。
耳に。
ピアスが増える夢……！！
なんつー、もんを見てるんだ俺は。
忘れろ。
忘れろ忘れろ忘れろ。
今何時だよ。二時って夜中じゃねーか。中途半端なところで起こされたな。
とりあえず布団被って目瞑ってたら眠くなるだろ。

忘れろ。
忘れろ忘れろ忘れろ。
あれは夢あれは夢あれは夢。

そうしている間に。
ゆっくりと睡魔が襲ってきて――。


☆　　　★　　　☆　　　★　　　☆　　　


――で。

結局一睡も出来ないまま登校している。
明らかに寝不足で不機嫌に自転車を飛ばしていると、
顔が邪悪な眼帯男の迫力か、すれ違う人間が自然に避けてくれるっていう。
いや、別に何か文句があってしかめっ面してるわけじゃねーよ、悪いな

自転車置き場の自分の定位置に自転車を止めたところで、
後ろから「センパイ」と声を掛けられて振り返る。
そこには風凪マナカがいて、カバンを両手に持ってこちらに歩いてくる。
………。いかん、頭が寝不足でボーっとする。

「今日早くないですか？
　受験勉強が辛すぎて、内申点でも上げにきています？」
「早朝登校の内申点だけで受験通るんなら、
　校門が開くまで毎日校門前で並んでやるよ……」

というか風凪がこの時間に登校している方が驚きだ。
ああ、でも去年風凪の机に色々仕掛けようとしたときも、
こいつ確かクラスで登校二番目に早かったな……。
内申点気にしてるのどっちだよと思ったが、それ以上に。

……夢が頭から離れん。

「眠そうですね」
「眠い」
「夜更かしですか？　お勉強大変そうですね」

お前のせいだよと言いそうになったが、
完璧にお前のせいではない。
激烈な悪夢よりも性質が悪い夢のせいで、脳内に霞が掛かったようになっている。
いらんこと口走りそうだ。

教室に向かって校舎の外側を歩く。
左に並ぶように着いてくる風凪が、少しだけ覗き込むように体を傾ける。

「センパイ、今日帰りどこか行きません？」
「ファミレス以外ならいいぞ」
「……わかりました」

何か引っかかるものを覚えたのか疑問符を頭に浮かべたまま、
でも突っ込むまでもないかと風凪は了解の答えを返す。

………。
引っかかりを覚えているのは、風凪だけではない。
今日の例の夢から、ずっと胸の中で言語化できない感情が巡っている。
確かに、何かが引っかかっているはずなんだが、それが何かがわからない。

風凪の耳に。
ピアス穴が増えている夢。

大体。
風凪の耳に、ピアスが増えてたからって、俺に何の関係があるんだ。
そもそもが最初に風凪の耳にピアス開けたのは自分だろうが、
何かにムカつくとしたらまず自分にムカつくべきだろう。
ていうかこれってムカついてるのか？
何に？　風凪に？　ピアス開けたことにか？
それこそ意味が分からない。一個も二個も同じだし、今更が過ぎる。

それでも。
あの夢の中で、感じたもやもやは。
今でもまだ思い出せる。
何に対して覚えたのかは分からないが。
自分の手で風凪の耳にピアスを開けておきながら、
自分の知らないところでその穴を増やしてきた風凪を見て。
……自分は確かに動揺した。

流れる髪の毛の隙間から、
風凪の耳に複数の金属が見えたとき。
ぞわっとするものが己の中に湧いたのは事実だ。
でも、その理由がさっっっぱりわからん。

風凪の横顔を見る。
どうも、俺が眠そうなのと機嫌がそれほどよろしくないことを察してか、
こちらを見ずにただ隣に並んで教室を目指している。
……まあ。
多分、風凪本人に言うと、重いだの、考えすぎだの言われるから、
出来る限り意識しないようにはしてきたが、
風凪の耳に穴を開けたあの日のことに対する罪悪感は、今でも胸の中にあるのだろう。
それが、婉曲な表現として夢に出てきて、
自分を苛んでいるんだろう。……いや。まあ、それは仕方なくねーか……？

風凪にバレないように、死角になった右手の指同士を擦り合わせる。
指先に残る感触はもう希薄だが、
あの時人間の肉に針を打ち込むあの感覚は脳がしっかりと覚えている。
少なくとも、誰かをそんな能動的な方法で傷つける機会は、
家業から足を洗った今訪れることはないと思っていたからこそ、残っている。

痛みをこらえるような風凪の顔。
夕方の教室の静謐。
確かに残る赤。
風凪マナカを傷つけた、若宮線引の指。

「………」

頭がぼんやりしてくる。
……中途半端に起こされてから寝てないから滅茶苦茶眠い。
風凪は今日も、平然と、
あの日に俺がピアス開けたことなんてなんでもないような顔をして、
今日もこうやって俺に並んで隣を歩いている。

そういえば。
こいつに告白紛いのことをした数日後だって、
風凪マナカは平然として俺の隣にいたっけ。

ああ、成程。
俺は、今回のピアスの件だけじゃなくて、
こいつに対して……そういう罪悪感を積み重ねてきていて。
そういう積み重ねが、ぬるま湯みたいな悪夢を見せてんのかな。
だとしたら重症がすぎる。
なんでこいつはそんな酷いことしてくる野郎の隣を歩けるんだ。

ていうか。
もう、傷は大丈夫なんだろうか。
治まってきたとか風凪は言うが、
ピアス穴は化膿しやすいとか、しばらくは腫れるとか聞いた気がする。
そうだよな、人体に元々差し込まれてない金属挿すんだもんな。
大丈夫かな。
……いや、これ、マジで穴二個に増えてたらどうしよう。

ぼんやりと考えたまま。


俺の指先が風凪の右耳の上の髪を持ち上げて。

………右耳に触れていた。



















「えっ」

















「……あ」

ENo.85 りりぃ とのやりとり


ENo.188 清春 とのやりとり

武術LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
防具LV を 5 UP！（LV60⇒65、-5CP）

C・サースター(299) とカードを交換しました！

リペイント （クリエイト：バンデージ）


ハードブレイク を研究しました！（深度0⇒1）
ハードブレイク を研究しました！（深度1⇒2）
ハードブレイク を研究しました！（深度2⇒3）

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

線引(506) は 浮草 を入手！
マナカ(507) は 浮草 を入手！
マナカ(507) は 何かの骨 を入手！
マナカ(507) は 腐肉 を入手！

マナカ(507) に移動を委ねました。

カミセイ区 S-9（沼地）に移動！（体調15⇒14）
カミセイ区 S-10（沼地）に移動！（体調14⇒13）
カミセイ区 S-11（沼地）に移動！（体調13⇒12）
カミセイ区 S-12（道路）に移動！（体調12⇒11）
カミセイ区 S-13（チェックポイント）に移動！（体調11⇒10）

MISSION!!
カミセイ区 S-13：チェックポイント《鰻屋》 が発生！
　　 - 線引(506) が経由した カミセイ区 S-13：チェックポイント《鰻屋》
　　 - マナカ(507) が経由した カミセイ区 S-13：チェックポイント《鰻屋》

［822 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［375 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［396 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［117 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［185 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　










　





チャット画面に映る、４人の姿。

　

　






　







少しの間、無音となる。

　






くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
















　

　

　

３人の様子を遠目に眺める白南海。





　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！




（初発生のイベント戦：異能FP+5！生産FP+5！）