親愛なるワトソンへ
久しぶり。言うほど久しいか? まあ久しいってことにしておこう。
久しぶりワトソン。この日記も結構習慣付いてきたな。
この間テレビに俺が映ってた。
全く覚えがない。どうもその日は植物園で事故があったらしくて
報道内容は異能力ある住民の多いイバラシティでは極々お馴染みの……
馴染みがあるのかどうか知らないけど。そんな感じの事件だった。
オープン当日の芙苑植物園で何者かによって襲撃を受けたらしい。
俺はそもそも植物園なんか行ってないし、行った覚えもない。
でもテレビに映ってるのは俺だったんだから多分行ったんだろう。
丁度前回日記を書いた日だ。翌朝見たら寝落ちしてたから相当眠かったんだろうな。
まさかと思って先生に電話したらやっぱり以前からその兆候らしきものはあったらしい。
先生曰く、単純に忘れっぽいだけなんじゃないかって言われた。
でも俺は違うと推測してる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
だって、忘れるだけならその前後の記憶はあるハズだろ。
俺のは丸々すっぽりその記憶自体が吹っ飛んでる。安易な忘却とはまた違う。
だから最初に見つけたメモも本来覚えていていいはずなんだ。
書いたこと自体は忘れていたとしても。
頭の中に覚えのない記憶があるのもイヤだけど、同じくらい覚えているべき記憶が
勝手に消えていってるのもかなりイヤだな。なんとかならないんだろうか。
そういえば八奈見の事件がすっかり収束したと思ったらまた別の奴が出てきた。
やっぱり異能絡みの事件っていうのは一筋縄でいかないもんだな。
俺なんかで手助けになるかどうかは分からないけれど今回も上手くやれるよう頑張る。
前回マリスの一件が片付いたときにほんの少しでも助けになれていたのなら
それはちょっと嬉しいかもしれない。使い処もない異能が誰かの役に立つのなら僥倖だって。
……先生に以前そう零したら怒られたんだった。今の先生には内緒な。
それじゃあまた、気が向いたらお前に手紙を書こう。
2020/05/10 菱形世論より
PS.部屋にお前の腕落ちてるのかと思ってビビって、よく見たら脱皮したあとの皮だった。おどかすな。
いつものように机に手紙を仕舞って、電気を消して、それから。
それから。
瞬きのあとに見た世界は異質だった。
目を開ける。
ハザマに転移していた。次のチェックポイントを抜けてからようやく
次のチェックポイントが見えてきた頃合いだ。やっとだ。
チェックポイントだけじゃなく移動もタクシーにお任せできないものか。……無理か。
前回の異様な眠気は完璧に払拭されていたので、おそらく一時的なものだったんだろう。
本当に植物園で何があったんだ。何も分からない。
こういう時に記憶がないっていうのは探偵として割と致命的なんじゃないだろうか?
やっぱり先生によくよく問い詰めるべきだったかもしれない。
あの人は知っているのに知らないふりをして誤魔化すことが多いから。
先生が折れるまで聞くべきだったな。失敗した。
2020年05月某日――探索継続中。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
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白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
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カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
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白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
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カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
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カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
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白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
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白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
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カグハ 「違うよー。」 |
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カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
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白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
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カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
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カグハ 「・・・・・」 |
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白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
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カグハ 「・・・・・その・・・」 |
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カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
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カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
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カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
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カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
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白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
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白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――