
……がらんっ!
そんな音で目覚めたっけな。
気が付いた時には、表の私じゃなくてワタシが出てたからびっくりしちゃった。
「おーい私ー?不調?どした、風邪でも引いた?」って語りかけて返事がなかった辺りで、ようやくなんか町が変わってることに気が付いたんだよねぇ。マジ?って感じだった。
だって周りの建物大体廃墟みたいになってるわ、変なのは蠢いてるわ、血の匂いがするわ……。
いんやぁ、表はまた悪夢でも見てんのかなぁ?って思って頬を抓った。
うん、なんと全力でやったせいでとっても痛かった。まだちょっと腫れてるかも。
んでその辺りで……あーっと、何だっけ?シロナミ?そんな名前の奴が頭になんか入ってきて事情説明するだけして帰ってったんだよねぇ。ナレハテ?ワールドスワップ?いまいちナニソレ状態なんだけど。
でも不思議なことに、一個だけめちゃくちゃ懐かしくて頭に残る単語があったんだなぁ。
それが……
『アンジニティ』
多分だけど、ワタシの故郷。
真面目な話すると、ワタシと表って別に最初から一緒だった訳じゃないんだよね。具体的にいつから表の脳内にお邪魔してるかって言われると、ちょっと出てこないんだけど。
間違いなく居たって言えるのは、二人目を殺った時くらいから?
そういう訳でワタシ、実は結構あやふやで、意味不明で、適当な存在なのです。
実際今日この話を聞くまで自分のことミリも覚えてなかったし!
てっきり表のあの子が人を殺すにあたって作った人格みたいなものだと勘違いしてた!
……っていうか、名前だけめちゃくちゃ懐かしいんだけど他全然思い出せない。すごい靄がかかってる感じある。
ってな訳で、ワタシは今目の前の山岳に向かおうとしています。その『アンジニティ』の入り口とか、そこから来た人とかその他色々見てみたいしね。何か危険らしいけど、そんなの知ったこっちゃない!
ワタシは退屈よりもリスクを選ぶ。そういう風にできている。
あと、もう一つ理由があってね。
こっちから素敵な匂いがしたんだ。表の世界で嗅いだことのない匂い!
ワタシと似てるんだけど、お仲間さんかなぁ。そうだったら嬉しいから、早く会ってみたいなぁ。
とにかく、そんな感じでこのハザマをワタシは歩いて踏破していくことにして行こうと思います。
だって……ねぇ?久方振りの血の匂いに、悪夢じみた荒廃の街並み、それから素敵な同族の匂い!
こんなにワタシ好みの世界なんだよ?どう考えたって冒険しなきゃ損じゃん!
カミサマってのもたまには粋なことしてくれるもんだね。おかげで今すっごーい幸せ♡
ま、そういう訳でワタシの、ワタシによる、ワタシのための旅路が今始まるわけだ!
よーっし、歩くぞー!それはもうすんごい遠くまで歩いちゃうぞーー!待ってろ同族ーーーー!!
……って、え?初手タクシーなの?ワタシの記念すべき第一歩は?アレ?待ってー!今すっごい良いところだったのにーーー!!