
――『理想の黒箱庭』(ブラックボックス・ユートピア)と『????(???????)』の根源(ルーツ)――
『理想の黒箱庭』(ブラックボックス・ユートピア)
其れは『内側』に特化された力である
家の『内装』を好きなように書き換える事も
PCやタブレット等の『性能』を書き換える事も
生物の『内部』を細胞やDNAレベルの書き換えを可能にさせ治療に転じる事も
『脳』を弄り操る事も...
『外側』はどうにもならないというデメリットさえ目を瞑れば人の身に剰るような、そんな力であった
人為的な奇跡と言っても良いかもしれない
使い手:神苑雄志の、そんな人為的な奇跡は実のところ"今の"両親の『遺伝』からではない
それどころか"今の"両親とは血は繋がっていない
本当ならば他の人間同様、本来の両親の『異能の一部分』を引き継ぐか、己の気質で発現するか、或いは稀であるが突然変異によって『異能(個性)』を得てその生を謳歌する――筈だったのだ
ある日、その両親に1人の赤子が授かる
その両親はどちらも異能持ちだが其れを人の役に立つ為に使い生計を立てていた
特別、金銭的な面で裕福とまでは言わないが…それでも親子3人で幸せに生きていく筈だった
その赤子が生まれてから数年経った頃
とある事件が起こる
彼らの住む家宅に不審な人物達が押し入り、両親が襲われ殺害された
警察は直ぐ様、現場の調査や事件に巻き込まれた両親などの司法解剖に力を入れていたが
不思議な事が起きていた
殺害された両親は直ぐに発見されたにも拘わらず家宅は腐臭がしていた
両親の遺体は其処に有ったが、子供の姿は何処にも無かった
両親の司法解剖の結果も不思議なものであった…どちらも異能が『消えてしまっていた』のだ
腐臭の原因や両親の異能のと子供の行方、何れも解明は出来ず、その事件は迷宮入りとなる
■月〇■日
――未来都市:???、タワー最上階フロア――
男性
「彼奴の両親が亡くなって12年くらいかな…
いやはや、時が経つのは早い」
女性
「何、感慨に耽ってるの…しかも亡くなったって
『貴方があの子の両親を殺した癖に』
私にあの子供に両親の異能、両方とも混ぜるよう『改造』を依頼してから誘拐したの、忘れてないわよ」
男性
「…おやおや、お前も当時はまだ8歳其処らだったろうによく覚えているものだ
彼らには悪いと思っているよ…でもね、二人とも国の発展に役に立ちそうな異能だったのに此方の誘いに乗らなかったから仕方ない
此方も人手が欲しかったんだよ…何の疑いも無く動いてくれる柱がさ…」
(女性の言葉に肯定しながらクスクスと笑う
女性はそんな男性に半ば引いていた)
女性
「…あの子が知ったら絶望ものね、憧れの両親は偽りの育ての親で
本当の両親は素材として自分の『異能』として在りつづけている
…あの子が別で発現した異能もおまけ………否、この際は『代償』かしら?それも引っ提げてさ」
男性
「『代償』、ね…其れに気付くのは何時になるだろうね?
何せ彼本人が得たのは『ちょっと寿命が伸びる代償(リスク)を追う代わりに対象の運命を少し変える事が出来る』異能だし…まるでミラクルだよね、今の父親は『運命変化(ミラクルゲーム)』って言っていたけど」
「彼は気づいていないし遅くとも老後…否、多分老いはしないか…なら気付くかな、その辺は…
まあ、それでも御国の為と頑張ってくれるよ、溜め込んだ年数は生きなければならないし、どうにかする方法は…いや、此の辺は良いか
ま、大丈夫だよ、彼の両親には『優しい箱庭の主』として育てるよう言いつけてきたのだし…反対していたけど押し通してさ」
(二人の居るタワーの最上階では窓から街を、国を見下ろして)
男性
「彼は理想郷を作るカギなのだから医者になることも許可したんだ
彼には人を救うという善を重ねながら長く生きてもらわなきゃ…ねぇ?『神苑クン』」
(彼の偽名を口にしけらりと、笑っているのだった)
"おわり"
此が神苑雄志という、両親に敬い、勉学に努め、御国の為と患者達の為と尽くしてきた男
『理想の黒箱庭』(ブラックボックス・ユートピア)と『運命変化(ミラクルゲーム)』の根源(ルーツ)
彼が『箱庭の主』で在る限り、彼はその未来から逃れることは出来ない